軍による性暴力

2000年女性国際戦犯法廷と報道圧力
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最終更新日:2017/03/02 17:33

1998年4月、ソウルで開かれた第5回アジア女性連帯会議で、

日本のVAWW-NET JAPAN(戦争と女性への暴力日本ネットワ-ク)から

「女性国際戦犯法廷」を開く提案がありました。

ベトナム戦争中にアメリカで開かれたラッセル法廷を参考にした提案です。

注:  ラッセル法廷  ベトナム戦争中の1967年に開かれたアメリカの戦争犯罪を裁いた民衆法廷です。

    提案者はバ-ドランド・ラッセルとジャン=ポ-ル・サルトルです。

    民衆法廷なので法的な拘束力はありません。

翌1999年2月にソウルで国際実行委員会が結成されました。

メンバ-は

加害国日本、被害国6ケ国(韓国、北朝鮮、中国、台湾、フィリピン、インドネシア)、国際諮問委員会の3者です。

それに法律顧問としてオランダのテオ・ファン・ボ-ベン教授とアメリカのロンダ・カプロン教授を迎えました。

そして2000年12月8日から12日にかけて、東京九段会館と日本青年館で「女性国際戦犯法廷」が開かれました。

参加者は公聴会も含めて延総数で6,000人にもなりました。

外国からは9ケ国からの被害者64名を含め390人が参加しています。

●法廷の主要メンバ-

裁判官

主席判事 ガブリエル・カ-ク・マクドナルド 旧ユ-ゴ国際刑事法廷前所長アフリカ系アメリカ人

判事   クリスチ-ヌ・チンキン      ロンドン大学国際法教授

    カルメン・マリア・アルヒバイ   世界女性法律家連盟会長  アルゼンチン判事

    ウィリ-・ムトウンガ       ケニア人権委員会委員長  ケニア大学教授

主席検事 パトリシア・セラ-ズ          旧ユ-ゴ、ルワンダ国際刑事法廷法律顧問

                                      アフリカ系アメリカ人

  ウスティニア・ドルゴポル       オーストラリア・フリンダ-ス大学国際法助教授

                                      元国際法律家協会スタッフ

各国検事団 10ケ国  日本6人、北朝鮮2人、韓国8人、中国4人、台湾6人、フィリピン7人、

  インドネシア4人、マレ-シア1人、東チモ-ル2人、オランダ2人

 

裁判の経過は・・・・

* 2人の主席検事による共通起訴状の朗読

要旨: 日本軍性奴隷制は人道への罪であるとして、昭和天皇をはじめ、東条英機、松井石根、山下奉文など

10人の日本軍、政府の最高責任者たちの刑事責任を追及、起訴し、また国家責任も追及した

* 各国検事団を紹介

北朝鮮、韓国は別々の検事団でしたが、戦争当時は1つの国だったため、南北は合同起訴状を読み上げました。

* 被害者の証言

* 元日本軍兵士の加害者証言

* 専門家証言 山田明             明治大学助教授

            フリッツ・カルスホ-ベン オランダ・ライデン大学教授

            レパムラジェノビッチ    セルビア・ベオグラ-ドの暴力反対女性自立センタ-代表

* 主席検事の論告 ドルゴポル検事

要旨:ドルゴポル検事

慰安所で行なわれたことは強姦であり、性奴隷制は人道への罪である。

被害者たちの回復には正義が必要であり、本法廷が正義を実現することを期待します。

        セラ-ズ検事

生存者の証言を聞いて、同時に亡くなった被害者のつぶやきも聞いた。

被害者たちの年齢に自分を置き換えて今晩、強姦される可能性を追体験しよう。

司令官たちに責任がないはずがない。

中でも全ての権限を持ち、全ての事柄について

知り得え、調査し、抑制し、指示できた天皇裕仁に責任がないはずがない。

* 起訴された被告人

天皇裕仁、東条英機、板垣征四郎、梅津美治郎、安藤利吉、松井石根、畑俊六、小林躋造、

寺内寿一、山下奉文、岡村寧次(支那派遣軍総司令官)、松山祐三(第56師団長・ビルマ)、

南次郎(朝鮮総督)、朝香宮鳩彦(上海派遣軍司令官)、谷寿夫(第6師団長・南京)、

中島今朝吾(第16師団長・南京)、長谷川清(台湾総督)、黒田重徳(第14軍司令官)、

本間雅晴(第14軍司令官)、川内伝七(南西方面艦隊司令長官)、高橋伊望(南西方面艦隊司令長官)、

肥原賢二(第7方面軍司令官)、原田熊吉(第16軍司令官)、有田八郎(外務大臣)、

近藤信竹(第5艦隊司令長官)、森岡二郎(台湾総督府総務長官)、加藤恭平(台湾拓殖(株)社長)、

牛島満(第32軍司令官・沖縄)、長勇(第32軍参謀)、本郷義夫(第62師団長・沖縄)

       注: 黄色線部分の10名が共通起訴状で起訴され最終的に有罪になりました。

* 判決

統一起訴状で起訴された10人のうち、最終的に人道に対する罪で、

昭和天皇裕仁に「有罪」の判決が下されました。

さらに、日本国家は慰安所の設置と運営に関して責任を取るべき、とされました。

* 最終判決

      2001年12月4日、オランダのハ-グで最終判決が下されました。

(内容) 元慰安婦に対して犯された犯罪について、上官としての責任および個人として責任で9名に有罪

  天皇裕仁、東条英機、板垣征四郎、梅津美治郎、安藤利吉、松井石根、畑俊六、小林躋造、寺内寿一、

マパニケ村集団強姦事件において有罪      山下奉文

そして、日本政府、国連、旧連合国に対して勧告が出されました。

* 日本政府に対する勧告  (要旨)

1 慰安婦制度の設立に責任と義務があり、そして国際法に違反することを認めること

2 法的責任を取り、2度と繰り返さないと保証し、完全で誠実な謝罪を行う事

3 犠牲者、生存者、回復を受ける権利がある者に対し、政府として被害を救済し将来の再発を防ぐのに

   適切な金額の損害賠償をおこなうこと

4 軍性奴隷制について徹底した調査を実施する機構を設立し、資料を公開し、歴史に残すこと

5 生存者たちと協議の上で、戦争中、過渡期、占領期及び植民地時代に犯された

   ジェンダ-に関わる犯罪の歴史的記録を作成する「真実和解委員会」の設立を検討すること

6 記憶にとどめ、「2度と繰り返さない」ために、記念館、博物館、図書館を設立することで、

   犠牲者と生存者を認知し、名誉を称えること

7 あらゆるレベルの教科書に意味のある記述を行い、研究者および執筆者に助成するなど

   公式、非公式の教育施作を行なうこと・・・・

8 ・・・・性の平等と地域の全ての人々の平等の尊重を実現するための教育を支援すること

9        帰国を望む生存者を帰国させること

   10 政府が所有する慰安所に関するあらゆる文書とその他の資料を公開すること

   11 慰安所の設置とその為の徴集に関与した主要な実行者をつきとめ処罰すること

   12 家族や近親者から要望があれば、亡くなった犠牲者の遺骨を捜して返還すること

* 国連および加盟国に対する勧告

1 ・・・・日本政府が完全な賠償を行うことを確保するために必要なすべての措置をとること

2 元慰安婦に関する日本政府の違法性および継続する責任について、

  国際司法裁判所の勧告的意見を求めること

* 旧連合軍に対する勧告

1 慰安婦制度の設立と運営、及び東京裁判でこの制度が訴追されなかった理由に関する

   あらゆる軍及び政府の記録を直ちに機密解除すること

2 東京裁判で天皇裕仁が訴追されなかったことに関する

    あらゆる軍及び政府の記録を直ちに機密解除すること

3 戦後の裁判で、さらにその後56年間にわたって、

  元慰安婦たちに対して犯された犯罪を調査し訴追することを怠ったことを  認め、調査し、

  資料を公開し、適切に生存じている実行行為者を訴追する措置をとること

 

このようにして慰安婦問題としては世界で始めて民間法廷が開かれたのです。

民間ですから国への拘束力はありませんが、世界に向けて発信できた事は次のように大きな意義があると思います。

* 長い間の沈黙を破った被害者たちの名誉と人権回復に答えた事。

  そしてその事が潜在の被害者たちをも勇気付けたこと。

* 性差別からの正義をはっきり打ち出した事。

* 東京裁判でも出せなかった天皇有罪の判決が出たこと。

また問題点も明るみに出ました。日本で開かれた日本の問題なのに、

日本人及び日本のマスコミの反応が鈍かった事です。

* 日本のメディアの参加  48社  105名

  外国のメディアの参加  95社  200名

メディアでは国営のNHKの報道姿勢が問題になりました。

NHKはもともとこの問題に関しては腰が引けているところがありましたが、

今回は特集番組放映で政治的圧力に負けたようです。

 

[報道への政治的圧力]

   2001年1月NHK教育テレビでは、4夜連続の特集ETV2001「シリ-ズ戦争をどう裁くか」を放映しました。

1月30日午後10時の第2回目、「日本軍の戦時性暴力」のタイトルでこの女性国際戦犯法廷の事が取り上げられました。

番組を作ったのはNHK関連会社のエンタ-プライズ21とドキュメンタリ-ジャパンです。

NHKは以前より番組を作ったときに放映前に自民党に検閲を受けていました。

このことはNHKの長井プロデュ-サの勇気ある告発わかったことですが、

今回の「日本軍の戦時性暴力」も放映前に自民党の安倍氏のサイド(関係者?)で事前チェックを受けました。

その結果内容の変更や部分削除が為されたのです。

さらに右翼による嫌がらせも行なわれました。

下記の抗議のいずれもが、放映日の前ですから、

自民党の検閲→右翼への連絡→抗議、になったのでしょう。

 嫌がらせは・・・・

* 1月20日 「女性国際戦犯法廷に抗議する国民会議」と名乗る団体から抗議書簡がFAXでNHKに送られた。

* 1月27日 維新政党新風、大日本愛国党などのメンバ-がNHKに抗議に来た。

午前10時頃「NHKの反日・偏向を是正する国民会議(維新政党新風が呼びかけ人)」の約30人が、

NHK4階正面玄関に押し寄せた。

「・・・・日本軍の戦時性暴力は、昭和天皇を戦争犯罪人と決め付けるおぞましい番組である。・・・・

戦争犯罪をデッチ上げる反日洗脳だ」と主張。

「放送を中止せよ」と詰め寄り。7時間も抗議した。

その後、大日本愛国党の街宣車6~7台が西口ゲ-トを突破して玄関まで乗りつけ、約1時間抗議した。

* その他担当者の自宅まで脅迫や抗議が殺到し、53件にも達した。

その結果、放映直前になって番組の内容は大幅に変更されました。どの様に変更されたのでしょうか?

* タイトルを変更した。  「日本軍の戦時性暴力」から「問われる戦時性暴力」

              注:名誉ある(?)日本軍という言葉を外したのです。

* 内容を大幅にカットした。

前日放送分の要約、翌日分の予告の時間をかなり増やした。

それでも足りなくて44分の番組を40分に短縮した。

* 責任者処罰、特に昭和天皇に関する部分がカットされた。

* 加害兵士の証言もカットされた。

* 2日前に急遽取材したコメントを3分以上挿入した。

番組のスタジオ出演者だったカルフォルニア大学準教授の米山リサ氏は

「・・・・発言意図、意味が不明になるほどの編集が加えられた。

これは発言の著作者としての人格権を侵害するのみならず、

研究者としての名誉を損なうもの」としてBRC(放送と人権等権利に関する委員会)に申し立てをしました。

 

現在でも自民党はテレビ、新聞等の全マスコミを検閲し、問題箇所は抗議しています。

政治による圧力を恐れるマスコミは自民党の意向に即した報道しか出来なくなっています。

このことは福島の原発事故の報道でも同じ事が言えます。

さらにNHKのトップを決定する経営委員会人選をを安倍総理が決めた事は

今後ますます報道への介入が強まる事と思います。

 

安倍氏がこの放送を批判する事は少し的外れです。

この法廷は現在の日本を裁いたのではありません。

侵略戦争をした旧日本軍国主義を裁いたものです。

この番組を批判する事は旧日本軍の行為を肯定する事になります、

そのことは東京裁判やサンフランシスコ条約を否定する事になります。

裁判や条約を受け入れた天皇をも否定する事につながるのです

 

 

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