石橋克彦の警告

神戸大学の応用地震学の教授だった石橋克彦氏も1990年代半ばから原発震災と言う言葉で警告を続けてきました。

沢山の論文がありますが、新聞に投稿と言う形で発表したものを転載します。

 

◎「今こそ原発震災の直視を」   朝日新聞「論壇」投稿原稿   1999年10月25日

 ・・・・政府・電力会社は、原発は「耐震設計審査指針」で耐震性が保証されているから大地震でも絶対に大丈夫だという。

 しかし、その根底にある(地下の岩石破壊現象)と地震動(地震による揺れ)の想定が地震学的に間違っており、

 従ってそれに基づいた耐震性は不十分である。

 そもそも日本列島の地震の起こり方の理解が進んだ今となっては、

 列島を縁取る16の商業用原発(原子炉51基)のほとんどが、大地震に直撃されやすい場所に立地している。

 日本海東縁~山陰の地震帯の柏崎刈羽・若狭湾岸・島根、「スラブ内地震」という型の

 大地震が足元で起こる女川・福島・東海・伊方、東海巨大地震の予想震源域の真っ直中の浜岡などである。

 原子炉設置許可の際、過去の大地震や既知の活断層しか考慮していないが、

 日本海側などでは大地震の繰り返し年数が非常に長いから、過去の地震が知られていない場所の方が危険である。

 また、活断層がなくてもマグニチュ-ド7級の直下地震が起こり得ることは、現代地震学の常識であるのに、

 原発は活断層のないところに建設するという理由でM6.5までしか考慮していない。

 しかも実は、多くの原発の近くに活断層がある。

 最近、島根原発の直近に長さ8Kmの活断層が確認されたが、中国電力と通産省は、

 それに対応する地震はM6.3にすぎないとして安全宣言を出した。

 長さ8Kmの活断層の地下でM7.2の1943年鳥取地震が起こって大被害を生じた実例も多く、この安全宣言は完全に間違っている。

 要するに、日本中のどの原発も想定外の大地震に襲われる可能性がある。

 その場合には、多くの機器・配管系が同時に損傷する恐れが強く、多重の安全装置がすべて故障する状況も考えられる

 しかしそのような事態は想定されていないから、

 最悪のケ-スでは、核暴走や炉心溶融という「過酷事故」、さらには水蒸気爆発や水素爆発が起こって、

 炉心の莫大な放射性物質が原発の外に放出されるだろう

 一般論として原発で過酷事故が起こりうることは電力会社も原子力安全委員会も認めている。

 一方、米国原子力規制委員会の報告では、地震による過酷事故の発生確率が、

 原発内の故障などに起因する場合よりずっと大きいという

 ・・・・原発震災は、おびただしい数の急性および晩発性の死者と障害者と遺伝的影響を生じ、

 国土の何割かを喪失させ、社会を崩壊させて、震を感じなかった遠方の地や未来世代までを容赦なく覆い尽くす。

 そして、放射能汚染が地球全体に及ぶ。

 ・・・・地震活動期に入りつつある日本列島で51基もの大型原子炉を日々動かしている私たちは、

 ロシアンル-レットをしているに等しい。

 この地震列島・原発列島に暮らすすべての人々が、この現実を正しく知って、どうすべきかを考える責任がある

(神戸大学教授 地震学 投稿)