棚上げ論

それはさて置き

現在日本と中国がもめていることは事実です。

日清戦争で勝ったので

国際法上(条約等?)正しいかもしれませんが、

日本領土にした経緯があやふやで

後めたい面があるため、

 

戦後ずっと話し合いは棚上げになってきました。

 

●2013年6月3日、

 元官房長官の野中広務氏が率いる

 超党派の議員団が中国を訪問しました。

 中国共産党の劉雲山氏と対談した後の記者会見で、

 1972年の日中国交正常化の直後に、

 田中角栄首相から聞いた話として

 「両国の指導者は尖閣諸島の問題を

 棚上げすることで共通認識に達した」と

 劉雲山氏に伝えた事を明らかにしました。

 大変重要で貴重な発言です。

 超党派の議員団は、古賀誠(自民党)、仙谷由人(民主党)、

 殻田恵二(共産党)、阿部智子(みどりの風)、

 白浜一良(公明党)、中村喜四郎(無所属)他

 

●2013年6月27日、

 元総理鳩山由紀夫氏は北京で、

 「敗戦時のカイロ宣言で中国に返すべき・・・・

 戦後棚上げになっている」と発言しました。

 

野中氏、鳩山氏だけではなく

戦後多くの大物政治家が

「棚上げになっているはず」と証言しています。

実際にはどうだったのでしょうか?

 

1972年に田中角栄が訪中し

日中正常化交渉がもたれた時、

当然両首脳は尖閣の問題に触れています。

但し国には正確な資料がありません

(或いは公開していないか?)

東京大学に残された資料で見てみます。

 

●田中首相・周恩来総理会議記録

日本政治・国際関係デ-タベ-ス 東京大学東洋文化研究所

(周恩来)    

 日中は大同を求め小異を克服すべきである

(田中首相)   

 大筋において周総理の話はよく理解できる。

 具体的問題については小異を捨てて、

 大同につくという周総理の考えに同調する。

(田中首相)   

 尖閣諸島についてどう思うか?

 私のところに、いろいろ言ってくる人がいる。

(周恩来)    

 尖閣諸島問題については、今回は話したくない。

 今、これを話すのはよくない。

 石油が出るから、これが問題になった。

 石油が出なければ、台湾も米国も問題にしない

 

資料はここまでになっています。

 

田中首相からの返事はないようですが、

「具体的問題については小異を捨てて、

大同につくという周総理の考えに同調する」と

発言しているので、

田中総理は周恩来の発言に

同調したものと解釈されています。

棚上げと言う言葉は使用していませんが、

内容的には棚上げでしょう。

 

1978年4月に中国漁船が尖閣諸島周辺に集結し

10隻が領海内に侵入しました。

その年1978年8月、

福田総理の時に日中平和条約が結ばれました。

その時にも当然尖閣諸島の問題は話し合われています。

その時の中国・鄧小平副総理と

日本・園田外務大臣の記者会見発言があります。

(鄧小平副総理) 

 国交正常化の際、双方はこれに触れないと約束した。

 今回平和条約交渉の際も同じく

 この問題に触れないことで一致した。

 両国交渉の際はこの問題を避けるのがいい。

 こういう問題は一時棚上げしてかまわないと思う。

 一部の人達はこういう問題にかりて、

 日中関係に水をさしたがっている。

(園田外務大臣) 

 この問題について、日本国の外務大臣として

 ひとこと言わなければならない。

 尖閣列島に関して日本の立場はご存知かと思う。

 今後このような偶発事件

 (注:4月の中国漁船侵入問題)が起こらないよう希望している。

(鄧小平副総理) 

 私にもひとこと言わせてもらいたい。

 このような問題を脇において、

 我々の世代は問題の解決を見つけていないが、   

 我々の次の世代、また次の世代は

 必ず解決方法を見つけるはずである。

 

この中で園田外務大臣は「尖閣は日本の領土であると」と

あえて主張しないで、「偶発事故」に触れています。

これは双方棚上げを認めるから、

侵入事故は避けていただきたいという意味です。

その事について園田氏は記録には残しています。

その後10月、鄧小平副総理が来日し福田首相と対談し

「この問題は話し合わないほうが良いことについて一致した」

とされています。

会談後の談笑のとき鄧小平氏が

「棚上げ」に言及し、

福田首相はコメントしなかったそうです。

 

翌年、昭和54年(1979年)3月30日(水)の

第87国会、外務委員会における

園田国務大臣の答弁を記載します。

少し長くなりますが正確を期するためにそのまま書きます。

 

●・・・・尖閣列島はご承知のとおりに

 中国とわが方は立場が違っております。

 わが方は歴史的、伝統的に日本固有の領土である、

 こういうことで、これは係争の事件

 (注:中国漁船侵入問題)ではない、こういう態度、

 中国の方は、いやそれは歴史的に見て中国の領土である、

 日本と中国の間の係争中の問題であるという

 差があるわけであります。

 そこで北京の友好条約締結のときに、

 鄧小平主席と私との間で、私の方から話をしまして、

 尖閣列島に対するわが国の主張、立場を申し述べ、

 この前の漁船のような事件があっては困る、

 こういうことを言ったところ、

 向こうからは私の主張に反論なしに、

 この前のような事件は起こさない、

 何十年でもいまのままの状態でよろしい

 こういうことで終わったわけです。

 その後中国の鄧小平副主席が日本に来られたときに、

 共同会見のときにたな上げだという言葉を初めて使われ、

 わが方は依然としてわが方の領土であること

 は明白であるといういきさつがあるわけでありますけれども、

 少なくとも日本と中国の友好関係の現状からしまして、

 この前のような、漁船団のような事件は起こさない、

 二十年でも三十年でもいまのままでよろしいということは

 わが方から言えば現在実効支配しているわけでありますから、

 ことさらに中国を刺激するような行動、

 これ見よがしに有効支配を誇示するようなことをたれば、

 やはり中国は国でありますから、

 自分の国であると言っているわけでありますから、

 これに対して異論を出さざるを得ないであろう。

 そうでない状態が続くことを私は念願しております

 ・・・・これは単に日本と中国との関係ということばかりでなく、

 日本の国益ということを考えた場合に、

 じっとしていまの状態を続けていった方が国益なのか、

 あるいはここに問題をいろいろ起こした方が国益なのか。

 私は、じっとして、鄧小平副主席が言われた、

 この前の漁船団のような事件はしない、

 二十年、三十年、いまのままでも

 いいじゃないかというような状態で通すことが

 日本独自の利益からいっても

 ありがたいことではないかと考えることだけで、

 あとの答弁はお許しを願いたいと存じます。

 

1990年にも「後日に棚上げ」は確認されています。

ではその後両国漁船による尖閣諸島周辺への

侵犯事故はどの様に防がれてきたのでしょうか?