メルトダウンから大事故へ

原子炉内部にある燃料棒は直径1センチ長さ4メ-トルの細長い筒になっています。

その中に高さ1センチ、直径1センチの丸い燃料が積み重なっています。

燃料はペレットと呼ばれています。

そのペレットに一定濃度のウランが含まれています。

 

制御棒が働いて核反応が停止しても残留熱や崩壊熱がかなり残ります。

原子力発電のエネルギ-効率は約30%と言われます。

核分裂で発生するエネルギ-の1/3以下です。

ですから100万Kwの原発だと、総発生エネルギ-は300万Kw以上になります。

そうすると残留熱だけでもかなりが残っていると思われます。

残留熱や崩壊熱を考慮すると停止後もかなりの長期間冷却し続ける必要があります。

そのためにはポンプで冷却水を原子炉に送らなければなりません。

しかし今回の事故は全電源停止でポンプは使えなくなりました。

つまり冷却できなくなったのです。

冷却材喪失が起きた場合、冷却材は減速材もかねているので、中性子の減速が出来なくなり原子炉は同時に停止します。

しかしものすごい熱が残留しています。

100万kwの原発では停止直後でも1秒間に20万kwの発熱をします。

少しずつ発熱は低下しますが、それでも空焚きによって強烈に熱が上昇します。

 

燃料ペレットが入る細長い筒はジルカロイド(ジルコニウム合金)という金属で出来ています。

ジルコニウムは正常運転中は400度の中にありますが、空焚きによって10秒後に約1000度、15秒後には約1700度に上昇します。

細長いジルコニウムの筒の融点は約2800度ですが、700度位で曲がり始め、1000度くらいで水と反応しさらに発熱します。

そして燃料棒の筒は溶けて、中に整然と積まれたペレットは崩れます。

この状態がメルトダウンです

崩れ落ちて積み重なった燃料は水がないので更に加熱します。

そうすると原子炉の底を突き破って格納容器に落下します。

数メ-トルのコンクリ-トの底を溶かして地中に落ちていきます。

その状態がメルトスル-(いわゆるチャインシンドロ-ムという)です。

 

「水素爆発」

酸化と還元と言う言葉があります。

金属は水分に触れると酸化しやすくなります。

水(H2O)の酸素を奪う事です。

これが酸化ですが、鉄の場合私達は「錆びる」と言います。

核燃料が入っている細長いジルコニウムも同じでジルコニウム水反応で原子炉内の水蒸気から酸素を奪って酸化ジルコニウムとなります。

H2O から酸素Oを奪うのですから水素Hが余ってどんどん充満してきます。

水素は一番軽いですから原子炉から抜けて外側の原子炉格納容器の上部に溜まります。

そこで何かの発火原因(火花)が生じて爆発をしたのでしょう。

それが水素爆発です。

しかし全電源が喪失している状態ですから電気による火花はありません。

そうすると壊れた配管や構造物が余震で擦れて発火したのではないかと思われます。

ということは津波の前に地震で構造物が壊れていた事になります。

 

「水蒸気爆発」

水は通常の気圧では100℃で沸騰します。

その時に膨張します。

水から水蒸気になるときに1800倍に体積が増えるといわれます。

その性質をうまく利用したのが蒸気機関です。

コントロ-ルに失敗すると大変な事になります。

火山でも加熱したマグマに水分が触れた瞬間に一気に膨張します。

これが火山の水蒸気爆発です。

原子力発電所でメルトダウンした燃料に水が触れた瞬間に1800倍くらいに膨張して大爆発をします。

これが原子炉の水蒸気爆発です。

その場合は核燃料・原子炉・格納容器を含め全てが爆発するのですから、水素爆発の比ではありません。

膨大な放射性物質が一気に放出されてしまします。

今回の事故では奇跡的に水蒸気爆発を起こしませんでした。

関係者はホッとしたはずです。