自律神経と薬の作用

薬が他の場所にも影響する具体例 2
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最終更新日:2017/12/30 10:02

次はピロリ菌除去に関することです。

「胃酸を止める薬」

胃の働きは外部から(口から)摂取した食事を強烈に殺菌することと、消化分解する事です。

その為に胃酸として塩酸と消化液が出ます。

そうすると食事だけでなく自分自身の胃壁に対しても攻撃をする可能性があります。

自分の胃の壁を守るために、胃は壁を絶えず新しくし、粘液を分泌して保護しています。

そのバランスが崩れて胃酸が勝つと、胃潰瘍など胃のトラブルの原因となります。

胃潰瘍の治療に昔は手術や胃壁の保護剤を使用しましたが、

最近では胃酸の分泌を減らしたり止める事で胃壁の回復を待つことが出来るようになりました。

またピロリ菌(ヘロリバクタ-ピロリ)が発見されて、その治療の一環として胃液を止めることが進んでいます。

ピロリ菌は胃や十二指腸の潰瘍やガンの原因になるとされているので、退治(除菌)しようとするのです。

胃酸は塩酸と同じで強烈な殺菌効果があり、菌や微生物は死にます。

ところがピロリ菌はアルカリ成分を分泌し自分を守る幕を作るため胃液の中でも生きられるのです。

ピロリ菌を退治する為に抗生物質を使用しますが、効果を上げるために、一旦胃酸分泌を止める必要があります。

その為のPPIという薬が発達しました。

☆胃液が出る仕組み

胃酸が出る仕組みの模式図です。

 プロトンポンプ

食事を摂取して胃の中に溜まり、出口の幽門部に来ると自立神経の働きで、殺菌・消化を開始します。

まず自律神経の働きでアセチルコリン、ヒスタミン2型、ガストリン等が分泌されます。

上の図の右側に矢印で示されています。

胃の壁ではアセチルコリンに対して「ムスカリン受容体」ヒスタミンに対して「ヒスタミンH2受容体」、

ガストリンに対して「ガストリン受容体」等の受容体が信号を受け取り、

胃酸分泌信号を出します。胃酸分泌の量が緑の矢印の太さで違います。

そして最終的にプロトンポンという胃酸ポンプが作動して胃酸が出るのです。

そのため胃潰瘍の治療やピロリ菌を退治するためには、胃酸を出ないようにする必要があるので、

各受容体やプロトンポンプそのものを作動させないようにします。

まず受容体を働かせない薬です。

ブロッカ-とか拮抗剤といわれます。

その仕組みです。

◎ヒスタミンH2受容体

ヒスタミンはアレルギ-に関係する1型と胃酸分泌の2型があります。

胃壁にあるヒスタミン2型の受容体をブロックして胃酸を出ないようにする薬です。

H2ブロッカ-と言います。

薬ではガスタ-10などが有名です。

◎ガストリン受容体

食事が胃に入ったときに胃の幽門部からガストリンが分泌されます。

これはホルモンです。

胃壁の受容体でキャッチすると胃酸が出ます。

抗ガストリン剤を使います。

薬は色々あります。

◎ムスカリン受容体

食事の信号が入ると交感神経で神経伝達物質アセチルコリンが出て、

胃壁ではそのアセチルコリンをムスカリン受容体でキャッチして胃酸を分泌します。

それを押さえるには抗コリン剤(M1ブロッカ-)を使います。

薬はアトロピン系薬剤です。

これ等の薬を別々に服用しても完全には胃酸を止めることは困難です。

そこでこれらの薬の信号を受け取って最終的に働く胃酸ポンプを直接止める薬が開発されました。

PPIと言います。

胃酸を分泌するポンプをプロトンポンプと言い、プロトン(水素イオン)の働きで胃酸を出しています。

そのポンプを直接止める薬がPPI(プロトンポンプ阻害剤Proton pump inhibitor)です。

良く使われる薬ではパリエットやタケプロンが有名です。

◎問題点

☆受容体やプロトンポンプが存在する場所と影響

これらの働きの中で、ヒスタミンH2受容体、ムスカリン受容体、プロトンポンプなどは

胃酸を分泌する胃壁にだけ存在するわけではありません。

全身に存在するので、胃酸を止める作用が目的であっても全身に影響を及ぼします。

☆ヒスタミンH2受容体

平滑筋、血球幹細胞、中枢神経系、心筋・・・などにも存在する

☆ムスカリン受容体

腸管の平滑筋運動促進、唾液分泌、心機能抑制、排尿促進・・・・等に関するところにも存在します。

☆プロトンポンプ

プ゚ロトンポンプにも数種類の型があり、全身に存在します。

☆胃酸を止めることの弊害

色々な薬を使って胃酸の分泌を押さえることは治療上必要な場合もあります。

しかし胃酸は強烈な殺菌作用があるので、私たちは安心して食事が出来るのです。

胃酸でピロリ菌以外の微生物などの細菌は死滅します。

強烈な殺菌作用がある胃酸の分泌を薬で止めると当然ながら殺菌が出来なくなります。

そうすると感染症を起こす危険性が増えます。

抵抗力(免疫力)が低下した高齢者などには注意したほうが良いと思います。

長期にわたって服用することにも注意したほうが良いかもしれません    

☆ピロリ菌(ヘロリバクタ-ピロリ)の除去と問題点   

ピロリ菌の検査が楽に出来るようになったため殺菌(除菌)は流行っています。

将来のガンや潰瘍を防ぐことが目的です。

殺菌をする為に抗生物質が使われますが、胃酸のある酸性の環境では効力が落ちるので、

まず胃酸の分泌をとめます。

そのために強力なPPI(プロトンポンプ阻害剤)を使います。

その上で2種類の抗生物質を1週間服用します。

それが成功しなければさらに2回目の除菌を行います。

問題は抗生物質で除菌できるのはピロリ菌だけではないということです。

全身の細菌が死んでしまいます

多くの菌は身体に悪いわけではなく、身体を守るために存在しているのです。

しかし除菌すると善玉の菌まで死んでしまうのです。

そして菌同士のバランスがくずれて、感染性下痢など新規の感染を起しやすくなります。

☆さらに問題は、抗生物質を使っても死なない菌が残った場合です。

抵抗力が落ち、守る菌もなく、抗生物質耐性を持った耐性菌だけが繁殖してしまいます。

耐性菌による発病があっても原因が耐性菌ですから、抗生物質が効かずに治療が困難になります。

ピロリ菌除去の結果、ガンや潰瘍は若干減るのですが、

総死亡数がかえって増える傾向があるという研究もあります。

☆PPIで各臓器の水素イオン濃度が調整できなくなる。

プロトンポンプには色々な種類があり、しかも胃にあるだけではありません。

最近では肺の細胞にもあり、免疫を制御していることが分かりました。

その為PPIで肺のプロトンポンポンプを止めると、肺炎になりやすいことが指摘されています。

高齢者は特に要注意でしょう。

さらに骨折や尿路感染の危険性が増えることも指摘されています。

健康なピロリ菌保菌者でガンや潰瘍のない人は無理に除菌をしないほうが良いかもしれません。

 

このテ-マは今回で終ります。

新年最初の更新は1月6日を予定しています。

再び「南京事件」に戻ります。

良い御年をお迎え下さい。

 

 

 

 

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