日本でのメタボ検診の基準は
2005年4月に8つの学会の連名で発表されました。
◎日本肥満学会、日本高血圧学会、日本動脈硬化学会、
 日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本腎臓病学会、
 日本血栓止血学会、日本内科学会
 
●  厚生労働省が義務化をした
  「標準的な検診・保健指導プログラム確定版」
2007年4月
 <特定検診・特定保健指導の概要>
  ◎対象者
   40~74才の医療保険加入者と家族
  ◎検診項目と判定値
   身長、体重、腹囲(臍の位置)、理学的所見、
   血圧、中性脂肪、HDL、LDL、
   空腹時血糖又はHbA1c、AST(GOT)、
   ALP(GPT)、γGTP、尿検査(尿蛋白、尿糖)
  ◎判定値
|  項目 | 保健指導判定値 | 受診指導判定値 |  単位 | 
| 血圧(最高/最低) |  130/85以上 |  140/90以上 | mmHg | 
| 中性脂肪 |  150以上 |  300以上 | mg/dl | 
| HDL |  39以下 |  34以下 | mg/dl | 
| LDL |  120以上 |  140以上 | mg/dl | 
| 空腹時血糖 |  100以上 |  126以上 | mg/dl | 
| HbA1c |  5.2以上 |  6.1以上 | % | 
| AST(GOT) |  31以上 |  61以上 | U/I | 
| ALP(GPT) |  31以上 |  61以上 | U/I | 
| γGTP |  51以上 |  101以上 | U/I | 
  注:保健指導とは指導員のアドバイスを受けなさい  
    受診指導とは病院にいきなさい、ということです  
    つまり血圧が130以上でも140までなら
    アドバイスだけで病院に行く必要はないのです。
  ◎問診項目
   現在の薬剤使用(血圧降下剤、糖尿病薬、コレステロ-ル低下薬)、
   既往症(脳卒中、心臓病、腎不全、貧血)、
   喫煙習慣、体重増加変化、運動習慣、
   食事習慣、飲酒、睡眠、生活習慣改善の意向
  ◎保健指導対象者の選定
   ステップ1: 
     腹囲とBMIで内臓脂肪蓄積のリスクを判定する
    (1)腹囲 男性:85cm以上、女性:90cm以上
    (2)腹囲 男性:85cm未満、女性:90cm未満かつBMI25以上
    (3)腹囲 男性:85cm未満、女性:90cm未満かつBMI25未満
    注:男性を例にすると、まず腹囲を85センチ以上と以下に分けて
      さらにBMIを25以上と以下に分けます。
      (1)が一番悪いということです
   ステップ2: 
     追加リスクをカウントする
    血糖(空腹時血糖またはHbA1c)異常、
         または糖尿病薬使用中
    脂質(中性脂肪またはHDL)異常、
         またはコレステロ-ルル低下薬使用中
    血圧異常、または血圧降下剤使用中
    それぞれ1点ずつ加算する
    1点以上の場合は喫煙歴(過去または現在)が
          あれば1点を加える。
   ステップ3: 
     内臓脂肪の蓄積のリスクと追加リスクにより
     保健指導レベルが決まる。
   注:ステップ1にステップ2を追加して
     判断するということです。
 
●  次は保健指導レベルの表です。
| 脂肪蓄積リスク | 追加リスク | 保健指導レベル | 
|     (1)   | 2点以上 | 積極的支援レベル | 
| 1点 | 動機づけ支援レベル | 
| 0点 | 情報提供のみ | 
|     (2) | 3点以上 | 積極的支援レベル | 
| 1~2点 | 動機づけ支援レベル | 
| 0点 | 情報提供のみ | 
    *動機づけ支援:原則1回の支援、
     積極的支援:3ケ月以上の継続的支援
 注:言葉の意味が不明確です。
   受診者からすると、指導ということは病院に行くことです。
   また医療機関からすれば治療をするということになるでしょう
 
   ステップ4: 
    65才以上は積極的支援と判定されても
    動機づけ支援に変更される
    血圧降下剤等を服用中の人は
    特定保健指導の対象者から外される
    注:65歳以上は数値が高くても
      そのままにするということですし、
      血圧降下剤等を服用中の人は
      そのままにしましょうということ.です
 
上記の2007年の指導プログラムを作るため、
厚生労働省は平成17年(2005年)に
「国民健康・栄養調査結果の概要」と言う報告を出しています。
厚生省ではその調査結果を元に
メタボリックシンドロ-ムの対象者を選んでいます。
男子
| 年齢 | 20~29 | 30~-39 | 40~49 | 50~59 | 60~69 | 70以上 | 40~74計 | 総計 | 
| 予備軍(追加1点) | 12.1% | 15.4% | 23.1% | 28.0% | 24.7% | 23.9% | 25.0% | 22.9 | 
| 強く疑われる     (追加2点) | 0.9% | 9.0% | 13.3% | 23.0% | 29.3% | 29.7% | 25.5% | 22.4 | 
| 合計 % | 13.0% | 18.4% | 36.4% | 51.0% | 54.0% | 53.6% | 50.5% | 45.3% | 
 
女子
| 年齢 | 20~29 | 30~39 | 40~49 | 50~59 | 60~69 | 70以上 | 40~74計 | 総計 | 
| 予備軍(追加1点) | 1.4% | 3.9% | 4.9% | 9.1% | 11.7% | 11.8% | 9.5% | 8.6% | 
|  |  | 2.2% | 3.1% | 6.0% | 15.1% | 19.3% | 10.3% | 10.0% | 
|  合計% | 1.4% | 6.1% | 8.0% | 15.1% | 26.8% | 31.1% | 19.8% | 18.6% | 
注:メタボ健診の対象になる
  40歳以上まとめてみると(右から2つ目)、
  男性の50.5%、女性の19.8%が引っかかります。
  若年層を加えて平均を下げても(一番右)、
  男性では45.3%が引っかかってしまいます。
  普通の成人男性の半分が検診に引っかかるとは、
  まるで病人を増やすために検査をしているようです。
以上は国のメタボ検診の基準です。
 
次に最新の厚生労働省の資料を見てみます。
2014年(平成26年)3月に発表された厚生労働省
「平成24年調査・国民健康・栄養調査報告」です。
ここではメタボ検診に限らず、リスクの保有を示しています。
●  まず腹囲で区別して追加のリスクの数を示しています
 追加リスク
  血中脂質
  血圧
  血糖
男性 腹囲85センチ以上
|   | 40代 | 50代 | 60代 | 70歳以上 | 
| リスク 1つ | 51.8% | 47.1% | 39.9% | 39.7% | 
| リスク 2つ | 20.9% | 31.4% | 38.8% | 39.7% | 
| 合計すると | 72.7% | 78.5% | 78.7% | 79.4% | 
 
女性 腹囲905センチ以上
|   | 40代 | 50代 | 60代 | 70歳以上 | 
| リスク 1つ | 41.5% | 46.3% | 38.9% | 36.4% | 
| リスク 2つ | 18.4% | 25.9% | 33.9% | 38.1% | 
| 合計すると | 59.9% | 72.2% | 72.8% | 74.5% | 
注:例えですが、リスク1つを軽い病気、
  リスク2つを重い病気として考えたら、
  中年上の3/4が軽い重いはともかくとして
  病気となってしまいます。
 
これだけ日本の健康基準が厳しすぎると、
数字の上で病人がドンドン増えてきます。
病院は繁盛するし、
製薬会社の売上げも増えるばかりです。
高齢化社会で医療費の高騰がニュ-になりますが、
実は検診基準が厳しすぎることも要因かもしれません。
健康保険をつかさどる保険組合は
経営が苦しくなっています。
いくら保険料を上げても追いつかなくなってきているのです。
そのせいでしょうか検診基準を見直す動きが出てきています。
 
2014年に2つの機関が見直しの基準値を発表しました。
 
まず日本人間ドック学会と
健康保険組合連合会が協力して
調査、発表した数値です。
2014年4月5日に公表されました。
 
●  検査基準値及び有用性に関する調査研究小委員会から
 約150万人の人間ドック検診受診者から
 いわゆる健康人34万人を選び、
 最終的にその中から超健康人(スーパ-ノ-マル)の人
 1万~1万5千人を調べて健康人の基準範囲を求めたものです。
 超健康人とは変な言葉ですが、
 健康な人の数値は一体はどれ位かを知る上で
 参考になると思います。
 それによるとメタボ検診と違ってかなり緩い基準値になっています。
 健康な人はこの範囲に入るという数字です。
  注:全員調べて数値を出すのではなく
    まず健康な人を選んで、
    その人がどの様な数値なのかをまとめます
    通常の検査と逆な検査です。
 27項目を調べていますが、その中から
 メタボ検診に関係の或るものを記載します。 
|   | 男性 | 女性 | 従来 (男女共通) | 
| HDLコレステロ-ル | 40~92 | 49~106 | 40~119 | 
| LDLコレステロ-ル | 30~80歳 | 72~178 | 30~44歳 | 61~152 | 60~119     | 
| 45~64歳 | 73~183 | 
| 65~80歳 | 84~190 | 
| 総コレステロ-ル   | 30~80歳 | 151~254 | 30~44歳 | 145~238 | 140~199 | 
| 45~64歳 | 163~273 | 
| 65~80歳 | 175~280 | 
| HbA1c | 4.97~6.03 |   | 30~44歳 | 4.83~5.83 | 5.5以下 | 
| 45~64歳 | 4.96~6.03 | 
| 65~80歳 | 5.11~6.20 | 
| 血圧  上     下 | 88~147 | 88~147 | 129以下 | 
| 51~94 | 51~94 | 84以下 | 
| BMI | 18.5~27.7 | 16.8~26.1 | 25以下 | 
| 中性脂肪 | 39~198 | 32~134 | 30~149 | 
 注:すべての項目で従来の国や学会基準より
   大幅にゆるくなりました。
   それぞれについては次からの各項目でも説明します。
こ
れだけゆるい基準ですと薬が必要なくなり
医療費の節約につながります。
この人間ドック協会の基準を適用することによって
病人がどれだけ少なくなるでしょうか?
東海大学大櫛陽一教授の試算があります。
|   | 従来基準での病人 | 新基準での病人 | 減る人数 | 
| コレステロ-ル | 4,200万人 | 360万人 | 3,840万人 | 
| 血圧 | 2,300万人 | 570万人 | 1,370万人 | 
| BMI | 1,800万人 | 740万人 | 1,100万人 | 
ばらつきはありますが薬代が半分から1/3位になるでしょう。
 
もう一つは日本高血圧学会が発表した
「高血圧治療ガイドライン」です。
こちらのほうは高血圧の項目で書きます。
 
次からは検診に関係する各項目を見てみます。