日本の毒ガス戦

河北省北担村毒ガス事件
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最終更新日:2016/04/09 11:02

     注:北担村の担は「瞳」と書く場合もあります。

山西省以外でも比較的多いのが河北省です。

河北省は三光作戦でも有名な場所ですが、北支那方面軍の燼滅掃討作戦「冀中作戦(三号作戦)」中に起こりました。

この作戦の時期は1942年5月1日から6月20日です。

●  作戦時期

作戦第1期 1942年5月1~10日

作戦第2期  同月11~15日

作戦第3期 前段作戦 同月16~25日

作戦第4期 後段作戦 同月26~6月20日

1942年5月27日、第110師団歩兵第163連隊第1連隊が北担村とその周辺の村を包囲した時、

中国共産軍と民兵が地下道に退避しました。

日本軍が地下道口に毒ガスを投入したため多数の被害が出ました。

中国側の調査では800人以上とも言われています。

歩兵第163連隊に含まれる歩兵第110連隊第11中隊の記録を書きます

戦争責任研究」第42号、上羽修論文を参考にします。

文中の北成村は北担村と推察されます。

● 小田中隊報告書  (原はカナです)

軍事機密

小あか筒利用セル北成村附近の戦闘に就いて

歩兵第110連隊第11中隊長 陸軍中尉 小田貞良

1 一般の敵情

省略

2 戦闘経過の概要

歩兵団予備隊たる小田中隊(1小欠、MG1分人員69名)は

5月26日滝冀作命第100号を受領し安国において大江少佐の指揮下に入る

大隊は明払暁を期し要員第1に示す態勢に展開を完了し

東城・西城・北成・南成の敵を包囲攻撃す

中隊は大江部隊命令に基き北方より前進中途中少数の敵を南方に潰走せしめ

所命の部落を包囲攻撃せるも敵影を認めず

西城を掃討中北成村方向に於て熾烈なる銃声を聞き

中隊は直ちに該村を東方及び南方より攻撃前進す

敵は部落外周の土塀の銃眼及屋上を利用し頑強に抵抗するも

交通壕の利用麦畑内を匍匐前進する等逐次敵に近接し敵前約50米迄前進するを得たり

9時30分頃MG及び擲弾筒の掩護射撃により果敢なる突撃を敢行し

指揮班前面の1火点を奪取せり

左第1線小隊は東南方より逐次に麦畑を匍匐し一挙に突入突角の1火点を奪取せるも

尚屋上及び土壁銃眼より頑強に抵抗し

前進意のごとくならざるとの報告に接し屋上にMG陣地を占領せしめ

左第1線小隊の正面屋上の敵を側射せしめこの機に乗じ小隊は主力をもって突撃を敢行

約50米前進するを得たり 小隊が突入するも1兵の敵なし

不思議に思い中隊長に報告せり 中隊長は突入地点附近を調査中穴あるを発見し

地下坑道内に退避せるものと判断し

要図第3に示す箇所に小あ筒を使用し其の入り口を布団をもって密閉せしめた

中隊は依然手榴弾および小銃による熾烈なる敵火力を逐次に排除し

12時部落中央附近に進出するを得たり

この時部落外に残置せる分隊の伝令1名来りて「敵1名地中より出たり」との報告に接し

直ちに東方に反転すると共にその情況を大隊本部に報告せり

現場において詳細調査するに西城に通する地下坑道内は喧騒を極め

その周章狼狽振りは地上においても想像に余りあり

尚も小あ筒をもって西城部落に脱逸せんとする敵の退路を遮断すると共に

要所に兵を配置し厳重監視に任めしめたり

部落内の坑道入り口も逐次に発見し小あ筒を投入密閉し脱出を封止せり

敵は愈愈あ筒の効力により思わざる地点に脱出を企員せるも

各要点に配置せる兵により逐次に刺殺又捕虜とせり

その間  坑道内は手榴弾の爆音、阿鼻叫喚その極に達す

斯する内に坑道の上部所々に縦穴を穿ち

苦力を使用して内部の状況を調査せしむると共に掃討を実施せしめたり

坑道内は濡れ手拭いをもって口を覆へば約13分間作業は可能

中隊も瓦斯希薄なる箇所に手拭にて口を覆い3人を1組とし逐次構内を掃蕩し

夜間は現体制のまま露営をなし 28日早朝より再び坑道内を徹底的に反復掃蕩を実施し 1

6時兵力を結集し定県に向かい帰還せり

 

当時北担村の作戦を現地で指揮した、第110師団歩兵第163連隊第1大隊の大江大隊長の記録文書です。

● 粛清建設計画大江隊

大江部隊の掃蕩治安戦にて特筆大書すべき戦闘は定県、安国を警備中大隊の全力を以て

毒瓦斯を利用し共産軍第1大隊を包囲殲滅せる北担、南担附近の○○戦なり・・・・

1  省略

2 定県南方召村付近の河川に沿う地区、特に安国県境に沿う地区は治安特に悪く、

    民衆は日本軍に親しますず、再々付近を掃蕩せるも空室清野戦法にて○の姿を見ずに終われり

3    斯くする内に南担、北担に画村に敵の大部隊あり。

    当部落には坑道を掘りある状況を知り大隊は現駐屯地より夜間行動を起し

    特に道路を避けて行動し払暁全村を包囲攻撃せり

4 午前5時頃全村を完全に包囲し敵の銃声と共に射撃戦を開始し漸時包囲線を圧縮し部落に突入せり。

    然るに今まで猛烈射撃しありし敵の姿全然なし。

    部落中にて尾根より○○○○を受け又入口にて地雷の爆発を受く・・・・

    直ちに部落外囲の坑道を捜索せしめ又部落中の井戸其他坑を捜索せしめ毒瓦斯を投入せしむ。

    然る所斯く共産軍の騒ぐ声聞きぬ。

    村より隣村に通える坑道を遮断せしめ坑道内にて共匪の数百名を窒息殲滅せしめ

    小銃、○○等約120挺鹵獲し我方にも○○以下数名の死傷ありたり。

    爾来定県南方河川流域の治安急速に良好となる

 

 この冀中作戦の状況を「戦史叢書 北支の治安戦2」から見てみます。

● 方面軍参謀部第2課調整資料(原文カナ)

・・・・冀中共産軍は中央の一般方針に基つき 只管我との正面衝突を避け 自己勢力の拡大、

組織の強化を図りつつありて対外的には宣伝を重点とする清治攻勢を以て我に対抗すると共に

対内的には民心の把握と自己食糧増産の為春耕援助工作を強化しつつあり・・・・

広地域に小兵力点在するか為に之が捕捉は困難にして、又此等基幹隊撃摧の為には大兵力を要せす

企図の秘匿急襲を必要とす・・・・彼等大部分か生産と完全に一致しあるか為に

匪民分離を困難にし且民衆動員による連防組織は遠距離よりする包囲奇襲を困難ならしむ・・・・

(作戦終了後)沙河、水道溝河に沿う地区(注:北担村を含む)は、

中共側が平原地拠点のモデル地区と称していた所であり、交通壕、地下壕の構築がはなはだしく進捗しており、

ほとんどの部落が地下施設を設け、3ケ所約7~8キロの間を地下壕で連接した所さえあった。

また部落民の抗日意識が強く、半農半兵の状態で、老若婦女すら何らかの抗日団体を組織しており、

ために各隊の実施する粛清はきわめて困難であった。・・・・

不期に遭遇するか、あるいは追いつめられたときの戦意は相当に強く、

特に部落による防御戦闘はきわめて強靭で、最後の一人になるまで抵抗した例は珍しくない。

● 本作戦についての所見と教訓(原文カナ)

中共軍は平原地帯の抵抗拠点として各種の地下施設に最大の苦心を払っていた。

たとえば、各家庭内床下に地下室を設けて相互に連設し、

更にこれを部落外の秘密連絡点まで坑道で連絡するか、

時には部落間に連絡用暗路を設けた所もあった。

地下室は大小様々のものがあり。

百数十名の兵員を収容できるものから、軍需品の一部を隠匿、格納するためのものまである。

坑道の入り口を発見するのは非常に困難であり、

社寺院、廟、古井戸、堆肥小屋、堤防、物置、森林の中などによく秘匿されていた。

畑などの凹道とか、丘の中腹には潜伏用の横穴がたくさん設けられていた。

 

地元の記念碑に刻まれた被害者への弔文です。

● 1942年の527は、1000人の英雄たちの血の海の1日だ。

「527」、それは偉大な民族解放戦争が敵味方の互いに譲らない段階に入った中でも

最も悲しみの大きな1日だった。

人を喰らう猛獣、日本侵略者とそのその走狗は、冀中の長期的統治の確保を狙い、

華北に戦闘用の溝や堡塁を構築し、人民に対して血も凍る虐殺を展開した。

定県の民族の愛国者800人-優秀な中国共党員と勇敢な戦闘指導員、民兵、農民たち-は、

まさにこの日、民族の不滅のために日本鬼子という獣どもと頑強に戦闘するなかで栄光の戦死を遂げた。

我々が「527」の惨状を忘れることは、永遠にあり得ない。

まだ母親の懐を離れない多くの乳飲み子と彼らの母親が、ともに虐殺された。

烈士の鮮血は、黄土を赤く染めた。

800人の遺体は、北担村内の通りいっぱいに横たわった。

子供らは父母を探し、父母は子供らの安否をたずねた。

流れる熱い涙で人々の目は赤くなった。

この恨みと傷心の日、それが「527」だ。

だれがこの日を忘れられようか!

(毒ガスについて)

親愛なる死者たちよ。

あなた方は、民族の自由と解放のために日本侵略者の壊滅的な「蚕食掃蕩」を粉砕した。

我々の故郷をまもるため、あなた方は夕刊にも武器を持って立ち上がった。

我々の武器は手製の銃であり大砲であり、自家製の手榴弾や地雷だった。

一方の日本鬼子は、これに100倍も勝る機関銃や大砲、戦車、毒瓦斯を持っていた。

あなた方は郊外で、家屋の上で、地道の中で戦った。

銃弾が雨あられと降るなかで、また毒ガスが充満するなかで、あなた方は激しく頑強に戦いを堅持した・・・・

 

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