朝日新聞の訂正記事と吉田清治証言

強制連行の意味について
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最終更新日:2015/10/25 10:42

当然のことですが法律的にはどうであれ、女性を拉致、売春を強要することは人道上許されないことです。

最近では慰安婦問題に関して強制連行はなかったと主張する人が増えています。

特に政治家に多いように思います。

その主張は朝日新聞の謝罪記事以降激しくなりました。

慰安婦問題は女性に対する人権侵害の問題であるのに、

強制という言葉だけが問題になり、あたかも強制連行でなければ良いような言いかたがされています。

 

今回は強制連行と言う言葉に絞って話を進めます。

暴力的連行や人さらいを強制連行と言いたいようですが、

本人の意思に反して連行する」ことは全て強制連行です。

刑法ではこれ等の罪は厳しく罰せられます。

刑法上は、暴力的な連行を略取といい、だまして連行することは誘拐としています。

略取も誘拐も本人の意思に反して連行することですから強制連行です。

 

当たり前のことですが軍と警察は違います。

軍が「戦争には慰安所が必要」という自分の都合で法をないがしろにした行動をとっても、

警察は法律を守る立場から取締ろうとしました。

最後には軍、軍事国家の力で押し切れらることは多いのですがやはり国家としては法を守ろうとしていました。

まず、明治時代にいわゆる「からゆきさん」を国外に移送したとき、様々なトラブルが生じました。

そのことに関して当時の外務省の訓令があります。

*外務省訓令第1号  1893年(明治26年)2月3日

近年、不良の徒各地を徘徊し、甘言を以て海外の事情に疎き婦女子を誘惑し

遂に種々の方法に因りて海外に渡航せしめ、渡航の後、正業に就かしむることを為さず、

かえってこれを脅迫して醜業を営なましめ・・・・

これが為に、海外において言うに忍びざるの困難に陥る婦女、追々増加し、

在外公館において救護を勉むといえども、

あるいは遠隔の地に在りて、その所在知るに由なく、

困難に陥れる婦女も、また種々の障碍の為にその事情を出訴すること能わざる者多し。

よってこれら誘惑渡航の途を途絶し、かつ婦女をしてみだりに渡航を企画せしめざるよう取計らうべし。

黄色線を引いた「甘言」「誘惑」「脅迫」これらを強制連行として取締ろうとしたのです。

 

その後1908年(明治41年に)刑法が制定されました。

*刑法第33条  (注: 1991年に改正されていますが基本的には変わりません)

第224条 未成年者略取及び誘拐

未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上5年以下の懲役に処する

第225条 営利目的等略取及び誘拐

営利、わいせつ又は結婚の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、

1年以上10年以下の懲役に処する

第226条 国外移送目的略取等

①  日本国外に移送する目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、2年以上の有期懲役に処する

②  日本国外に移送する目的で人を売買し、又は略取され、誘拐され、

   若しくは売買された者を日本国外に移送した者も、前項と同様とする

このように刑法上は「略取及び誘拐」となっていますから、

暴力的な行為も甘言を用いただましも同等に処罰されます。

そしてそいずれも本人の意思に反していますから強制連行です。

 

慰安所が開設された当初、慰安婦の調達方法に日本の警察は驚き、取締りを強化しました。

1 1932年3~5月、長崎から上海に15人の女性を連行した事件

2 1933年3月、未成年女性を静岡県から満州国に連行した事件

3 1933年5月、同じく静岡から連行しようとして逮捕された事件

4 1936年、佐賀県から未成年女性を満州に連行する途中、門司で逮捕された事件

5 1938年1月、和歌山から上海に慰安婦として連行しようとした男3人を、婦女誘拐の疑いで拘束

この中で2,3,4の例はカフェ-女給名目だった為、「娼妓取締規則」違反でした。

1番目の事件を取り上げます。

この事件は逮捕後、長崎地裁判決→長崎控訴院判決→大審院(最高裁)で判決が出されました。

まず判決の要点ですが

*上海の海軍指定慰安所に「醜業に従事するものなること」の事情を秘し

*単に女給、または女中と欺瞞

*収入は祝儀だけでも1ケ月7~80円に達し、1年ぐらい居り家を造りたる人ひともあると、勧説、誘惑

*計5回にわけて女性たちを上海に移送した

そして判決は7人に懲役2年から3年6ケ月の実刑、3人に執行猶予の処分がされました。

*その時の大審院の判決文の中から  1937年3月5日

当時上海は、わが帝国軍隊駐屯し、わが裁判権および警察権の及し場所、

すなわち、わが主権の及べる場所なるをもって、土地そのものは中華民国に属せるものなるべしといえども、

かかる場所に人を移送するは、刑法226条に、

いわゆる帝国外に移送するものといういうべからざるものと信ず。

はたしてしからば、原判決は不当に法律を適用したる違法あるものなりというにあれども、

誘拐罪につき刑法226条に特別規定の設けられた理由は、

畢竟国情を異にし、帰還の容易ならざる他国に被誘惑者を移送し、

または移送する目的とするはごときは、普通の誘惑行為に比し、

情状軽からざるものあるによること勿論にして、

その他国に帝国軍隊の駐屯すると否と、わが裁判権ならびに警察権の行たわるると否は、

問うところにあらず・・・・

その結果内務省警補局長からも通達が出ています。

* 支那渡航婦女の取扱いに関する件 1938年2月23日 内務省警補局長 内務省発警5号 原文カナ

・・・・これら婦女の募集斡旋の取り締まりに、適性を欠く事は

帝国の威信を傷つけ皇軍の名誉を損なうのみならず、

銃後の国民特に出征兵士遺族に好ましくない影響を与えると共に、

婦女売春に関する国際条約の主旨に背く・・・・

 

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