報道の質

デイビッド・ケイ報告書
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最終更新日:2019/08/24 11:03

国連の「表現の自由特別報告者」デイビッド・ケイ(David Kaye)が平成28年4月に来日しました。

注:正式には「意見及び表現の自由に対する権利の促進と保護に関する特別報告者

    国連の特別報告者とは特定の国の人権状況やテ-マ別の人権状況について事実調査・監視を行う。

    国連人権委員会が任命する。

    いかなる政府、組織からも独立した資格で調査に当る。金銭的報酬はないとされる。

    デイビッド・ケイ氏は国連人権委員会から任命された独立専門家で2014年に就任、米国出身。

    国際人権法や国際人道法の専門家。

デイビッド・ケイ氏は2015年12月に来日予定でしたが、日本政府側の非協力の為に延期されていました。

そしていよいよ、デイビッド・ケイの報告書です。

2016年4月14日発表され、正式な報告書は2017年に国連人権委員会に提出されます。

 

 

デイビッド・ケイのの国連人権委員会への報告書は、

暫定報告書が2016年に、正式な報告書が2017年に出されました。

そして2019年6月に、2017年の我国への勧告に対して、日本政府がどのような対処をしたのかの報告が出されました。

結果は日本は何の対処もしていないのですが、少し詳しく書きます。

 

「デイビッド・ケイの暫定報告書」

まずデイビッド・ケイの2016年4月14日に発表された暫定報告書です。

●デイヴッド・ケイ特別報告者の暫定報告

◎メディアの独立

放送法3条は、放送メディアの独立を強調している。

だが、私の会ったジャ-ナリストの多くは、政府の強い圧力を感じていた。

政治的に公平であることなど、放送法4条の原則は適正なものだ。

しかし、何が公平であるかについて、いかなる政府も判断するべきではないと信じる。

政府の考え方は、対照的だ。

総務相は、放送法4条違反と判断すれば、放送業務の停止を命じる可能性もあると述べた。

政府は脅かしではないと言うが、メディア規制の脅しと受け止められている。    

ほかにも自民党は2014年11月、選挙中の中立、公平な報道を求める文書を放送局に送った。

15年2月には菅義偉官房長官がオフレコ会合で、あるテレビ局は放送法に反していると繰り返し批判した。

政府は放送法4条を廃止し、メディア規制の業務から手を引くことを勧める。

日本の記者が、独立した職業的な組織を持っていれば政府の影響力に抵抗できるが、そうはならない。

「記者クラブ」と呼ばれるシステムは、アクセスと排他性を重んじる。

規制側の政府と、規制されるメディア幹部が会食し、密接な関係を築いている。

こうした懸念に加え、見落とされがちなのが、(表現の自由を保障する)憲法21条について、

自民党が「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、

並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」との憲法改正草案を出していること。

これは国連の「市民的及び政治的権力に関する国際規約」19条に矛盾し、表現の自由への不安を示唆する。

メディアの人たちは、これが自分たちに向けられているものと思っている。

◎歴史教育と報道の妨害   

慰安婦をめぐる最初の問題は、元慰安婦にインタビュ-した最初の記者の一人、植村隆氏への嫌がらせだ。

勤め先の大学は、植村氏を退職させるよう求める圧力に直面し、

植村氏の娘に対し命の危険をにおわすような脅迫が加えられた。

中学校の必修科目である日本史の教科書から、慰安婦の記載が削除されつつあると聞いた。

第二次世界大戦中の犯罪をどう扱うかに政府が干渉するのは、民衆の知る権利を侵害する

政府は、歴史的な出来事の解釈に介入することを慎むだけではなく、

こうした深刻な犯罪を市民に伝える努力を怠るべきではない。

◎特定秘密保護法   

すべての政府は、国家の安全保障にとって致命的な情報を守りつつ、

情報にアクセスする権利を保障する仕組みを提供しなくてはならない。

しかし、特定秘密保護法は、必要以上に情報を隠し、原子力や安全保障、災害への備えなど、

市民の関心が高い分野についての知る権利を危険にさらす。

懸念として、まず、秘密の指定基準に非常にあいまいな部分が残っている。

次に、記者と情報源が罰則を受ける恐れがある。

記者を処分しないことを明文化すべきで、法改正を提案する。

内部告発者の保護が弱いようにも映る。

最後に、秘密の指定が適切だったのかを判断する情報へのアクセスが保障されていない。

説明責任を高めるため、同法の適用を監視する専門家を入れた独立機関の設置も必要だ。

◎差別とヘイトスピ-チ   

近年、日本は少数派に対する憎悪表現の急増に直面している。

日本は差別と戦うための包括的な法整備を行っていない。

ヘイトスピ-チに対する最初の解答は、差別行為を禁止する法律の制定である。

◎選挙の規制 (省略) ◎デジタルの権利 (省略)

◎市民デモを通じた表現の自由   

日本には力強く、尊敬すべき市民デモの文化がある。国会前で数万人が抗議することも知られている。

それにもかかわらず、参加者の中には、必要のない規制への懸念を持つ人たちがいる。

沖縄での市民の抗議活動について、過剰な力の行使や多数の逮捕があると聞いている。

特に心配しているのは、抗議活動を撮影するジャ-ナリストへの力の行使だ。

 

そして正式な報告書です。

●デイビッド・ケイの正式報告書

正式な報告書と勧告は2017年の国連人権委員会に提出されました。

報告書はかなり長い文章です。

まず項目のみを書いて最初の方は削除して、最後の「結論及び勧告(パラ61~64)」のみを詳しく書きます。

さらにこの勧告に対して日本政府がどのような対処や履行したのかの結果報告が、

デイビッド・ケイ氏から2019年6月24日に国連人権理事会に出されました。

2017年の勧告と2019年の結果報告をあわせて書きます。

解りやすくする為に、2017年の勧告のポイントは黄色に、2019年の結果報告を赤字にしました。

ほとんど国連からの勧告を履行していないことが分かります。

残念ながらこれが私たちが支持している政府の姿勢です。

 

要約  省略

Ⅰ.序論(パラ1~5)  省略

Ⅱ.国際法基準及びミッションの主な目的(パラ6~8)  省略

Ⅲ.日本における表現の自由の基盤への課題(パラ9~12)  省略

Ⅳ.日本における言論及び表現の自由の権利の状況:主要所見(パラ13~14)  省略

A.メディアの独立(パラ15~36)  省略

B.表現への介入/歴史の発言(パラ37~42)  省略

C.情報へのアクセス(パラ43~52)  省略

D.差別とヘイトスピ-チ(パラ53~55)  省略

E.選挙運動における規制(パラ56~57)  省略

F.デモ(パラ58~60)  省略

Ⅴ.結論及び勧告(パラ61~64)   

61.特別報告者は、あらゆる活動を通して、民主的な社会における言論及び表現の自由の重要性を繰り返し述べる。

   言論及び表現の自由の権利の保護は人権の促進・保護の中心をなすものであることを強調する。

   人権に対する日本の歴史的なコミットメントは、

   地域的にも全世界的にも指導者としての重要な立場にある国と位置づけた。

   繰り返しになるが、情報や思想の自由な交換を保護・促進するというそのコミットメントは、

   過去数十年にわたり日本が経験した経済的及び科学的進展にとり確実に不可欠であった。

   日本国憲法は、おそらく、核となる市民的及び政治的権利、特に表現の自由の権利のために設けられた

   確たる保護を付与された歴史プロセスにおける重要な要素であり続けている。   

62.政府による検閲が存在しないということも重要なことではあるが、

   こうした非常に堅固は基盤があるにもかかわらず、特別報告者は著しく心配な兆候を確認した。

   メディア、歴史的な出来事を議論する限られた場所、

   国家安全保障上の理由に基づく情報アクセスの制限の増加に対して政府高官が行使し得る直接的な圧力が、

   日本の認主主義基盤をむしばまないよう注意する必要がある。   

63.特別報告者は、日本がインタ-ネットの自由の分野において重要なモデルを示していることを強調する。 

   日本は、インタ-ネット普及率が高いレベルにあり、政府は内容制限に携わっていない。

   デジタルの自由への干渉度が非常に低いレベルにあることは、政府の表現の自由へのコミットメントを説明している。   

64.しかしながら、特別報告者は、日本の民主主義基盤を更に強化するため、建設的関与の精神で、

   以下の措置を勧告する

A.メディアの独立

65.特別報告者は、現在の放送メディアを所管する法的枠組を見直すこと、

   特に、政府に対し、政府による干渉の法的基盤を除去し、報道の独立性を強化する観点から、

   放送法第4条の見直し及び撤廃を勧告する

   この措置と並んで、特別報告者は、政府に対し、

   放送メディアに関する独立規制機関の枠組みを構築することを強く要請する。

 →未履行 2019年6月24日に国連人権理事会 提出    

66.特別報告者は更に当局及びメディア団体に対し、報道関係者もしくは他の調査報道業務を行う専門家に対して、

   いかなる脅しも威嚇も拒否することを公然と表明することを求める   

67.公共及び民間の放送メディア団体、活字メディア団体は、

   特に、議論を呼ぶ話題を調査しコメントするジャ-ナリストへの全面的な支援及び保護を保障しつつ、

   編集活動に対するいかなる直接的及び間接的な圧力に対して、常に警戒すべきである。

   沖縄における軍事活動に対する抗議や原子力事業と災害の影響、

   第二次世界大戦における日本の役割といった非常に機微な問題を取材する

   ジャ-ナリストに対する支援に特に注意が支払われるべきである。   

68.報道の自由及び独立はジャ-ナリスト間の更なる結束なくしては守られ得ない。

   特別報告者は、ジャ-ナリスト団体に、現行の記者クラブ制度が及ぼす影響を議論し、

   少なくとも広範囲のジャ-ナリストが参加できるように会員を拡大する責任を負う立場にあることを求める。

   特別報告者はまた、ジャ-ナリストに対し、

   独立した報道の促進がいかにマルチメディアで働く専門家のつながりを促進できるかを評価することを求める。

B.歴史的教育及び報道への介入

69.特別報告者は、政府に対し、教材における歴史的出来事の解釈への介入は慎むべきこと

   また、第二次世界大戦中に日本が関与した出来事に特に留意しつつ、

   これらの深刻な犯罪について国民に知らせる努力を支援することを求める。

   政府は学校のカリキュラム作成において完全なる透明性を確保し、

   教科用図書検定調査審議会自体を政府の影響からいかに守るかを再検討することにより、

   公教育の独立性に、有意義に貢献すべきである。       

未履行 2019年6月24日に国連人権理事会 提出   

70.「慰安婦」問題を含む過去の重大な人権侵害に係る公開情報を検証していくため、

    政府は、「真実・正義・賠償・再発防止保証の促進(真実の権利)」特別報告者の訪問招請を

    検討すべきである。       

未履行 2019年6月24日に国連人権理事会 提出

C.選挙運動とデモ   

71.特別報告者は、選挙運動に対して不当な制限を課す公職選挙法の規定を廃止することにより、

   公職選挙法を国際人権法に準拠させるための改正を求める。    

未履行 2019年6月24日に国連人権理事会 提出   

72.特別報告者、訪日時及び訪日後に受け取った情報に基づき、

   沖縄における公の抗議活動に向けられた圧力を特に懸念している。

   特別報告者は、公権力、特に法執行機関が緊迫した状況下に置かれていることは理解するが、

   公権力、特に法執行機関は、メディアによる抗議活動に関する報道も含め、

   公の抗議活動や反対意見の表明が可能となるよう、あらゆる努力を行うべきである。

   抗議活動を行う者に不均衡な処罰を科すことを含め、悪者扱いすることは、

   全ての国民が公共政策への反対意見を表明する基本的自由を徐々に損なうことになる。       

未履行 2019年6月24日に国連人権理事会 提出

D.特定機密保護法   

73.特別報告者は、たとえその情報の開示が日本の国家安全保障を脅かさないとしても、

   その情報が秘密と指定される可能性を避けるための継続的な取り組みと警戒を促す。   

74.特別報告者は、政府関係者から、

   政府は同法25条の厳しい罰則をジャ-ナリストに適用する意図はないとしていることを聞いたことには満足しつつも、

   政府に対し、法自体がジャ-ナリストの業務に萎縮効果を与えないことを保障すべく同法を改正することを促す。

   また、特別報告者は、政府関係者から、ジャ-ナリストが情報を開示したとしても、その情報が公的な関心事項であり、

   ジャ-ナリズムの誠実かつ合法的な追求の中で得られたものである限り、

   罰せられないことを聞いたことには満足しつつも、

   自由権規約委員会の提案を踏まえて、政府に対し、ジャ-ナリスト及び政府関係者を含め、

   いかなる個人も、日本の国家安全保障に危害を与えない国民の関心事項である情報を開示しても

   処罰されないことを保障する例外規定を同法に含めることを奨励する。   

未履行 2019年6月24日に国連人権理事会 提出   

75.指定された秘密にアクセスする権限を有する者による情報の開示を罰する条項は、

   最低限、情報の開示が公益に叶うものであり、

   またその開示が日本の国家安全保障を危険にさらさないという誠実な信念に基づいて

   情報を漏えいした個人に対する例外規定を含むべきである。   

未履行 2019年6月24日に国連人権理事会 提出   

76.また、情報への権利は、法律を超越して、

   不正の報道や公益に叶う情報の報道を促進する社会的及び組織的な規範の基盤を必要としている。

   こうした規範の強化のためには、様々な機関のあらゆるレベルに対する訓練と政治及び企業のリ-ダ-や

   国際公務員、裁判官等による支持表明、報復がなされた場合の説明責任の追及が必要である。   

77.衆議院は、政府に対し、説明責任の向上を求めており、特別報告者は政府に対し、

   専門家を配置した独立の監視委員会の設立によって、この目標を達成することを奨励する。  

未履行 2019年6月24日に国連人権理事会 提出

E.差別とヘイトスピ-チ   

78.特別報告者は、日本に対し、広範な適用可能な反差別法を採択することを促す。      

未履行 2019年6月24日に国連人権理事会 提出   

79.特別報告者は、例えば、ヘイトに対抗する教育上及び公的なステ-トメントを通して、

   ヘイトスピ-チ問題に取り組む日本政府の努力敬意を表する。他方、スピ-チそのものは、

   自由権規約第20条及び同規約第19条第3項の要件を満たさない限り、制限されるべきではない。

F.デジタル権   

80. 省略   

81.法律は、国家による通信の監視は、最も例外的な場合において、

   また、独立した司法機関による監視の下でのみ行わなければならない旨を規定しなければならない

   特に、法はいかなる電子的又はデジタルな監視も、少数集団を対象とし監視する等の

   差別のために適用されてはならないと補償する基礎的な原則を遵守すべきである。

未履行 2019年6月24日に国連人権理事会 提出

 

繰り返しますが、私たちはこのような報道環境の中にいて、

情報を鵜呑みにして判断しているのだと理解するべきです。

 

 

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