原子炉材料の劣化

原子炉の内部では核分裂を起こすために中性子が飛び交っています。

中性子が原子炉の壁に当たる事で材料の鉄に影響を与えます。

いわゆる鉄は鉄の元素が規則正しく並んで結合しています。

その状態を「格子」と言います。格子戸の格子です。

その結合の中での電子類は動いていますが、そこに強烈な放射線が照射されます。

すると、原子核や電子が放射線エネルギ-で弾き飛ばされます。

その結果部分的に隙間があいたり、穴が出来たりします。

つまりスカスカになることで、中性子劣化とか照射劣化と言います。

結果として鉄が脆く硬くなり柔軟性がなくなりますので脆性破壊を起こしやすくなるのです。

分かりやすく言うと、よくチョコレ-トに例えて説明されます。

柔らかいチョコレ-トは衝撃を加えても割れないでぐにゃっと曲がります。

硬くなったチョコレ-トはポンと衝撃を加えると割れます。

同じように中性子劣化を起こした鉄も硬くなってくると脆くなり割れやすくなります。

だいた鉄はマイナス20℃くらい以下になると弱くなります。

原発の格納容器とか圧力容器は内部を全部鉄で作ります。

劣化すると危険なので劣化の目安として鉄片を切って何十個も原子炉内の壁に貼り付けます。

定期点検のときにその鉄片を取り出してパチンと叩いて割れるかどうかテストします。

脆性試験です。

ノッチ(切り込み)を入れておいてハンマ-で叩くテストをします。

冷えた鉄なら割れやすいのですが、温度が高くなると普通は割れにくくなります。

ところが玄海原発の試験片では90℃で割れたという報告があります。

高温でも割れたのですから、玄海原発で使われている鉄はかなり劣化していると言う事の証明になります。

驚いて何回かやり直す。

すると30℃で割れる鉄片や90℃で割れる鉄片が混在している事が分かりました。

どういう意味なのかと言うと、恐らくコストダウンの為に違い材料をごちゃ混ぜに使っている可能性もあります。

九州電力では試験した結果を保安院に報告したはずですが、保安院はその報告を受けていないと言っています。

そんな状況もあるので玄海原発は危険だと言われています。

 

「鋼鉄の不純物が劣化促進」

 中性子の影響で鉄が劣化を起こすことは述べましたが、材料に不純物が入っていれば劣化がより速くなることが予想されます。

初期の原発では鉄の精製技術不足の影響で不純物として銅が混入していることがわかりました。

(2012年3月13日経済産業省原子力安全保安院や電力各社への取材 東京新聞より)

鋼鉄製の原子炉容器に銅が入っていた場合、中性子の照射で銅分子が一部に集まり鋼材が硬くなり(もろくなる)との報告です。

初期の1970年の敦賀原発では0.24%の銅が混入し、最近では精製技術の進歩で0.01%まで下がっています。

つまり初期からみると24分に1になっているということです。

一律に原発の耐用年数を決めるのではなく、古いものは危険を考慮して早く閉鎖をするべきでしょう

古い原発と新しい原発の銅の混入比率の表です。

 

古い原発

電力会社

原発名

運転開始

銅の混入比率

日本原子力発電

敦賀1号

1970年

0.24%

東京電力

福島第一 1号

1971年

0.23%

関西電力

美浜1号

1970年

0.16%

 

高浜1号

1974年

0.16%

中国電力

島根1号

1974年

0.16%

九州電力

玄海1号

1975年

0.12%

新しい原発

北海道電力

泊3号

2009年

0.04%

九州電力

玄海3号

1994年

0.018%

東京電力

柏崎刈羽2号

1990年

0.01%

 

柏崎刈羽5号

1990年

0.01%