基準値は安全か?

もともと放射線は少ないほうが良いには決まっている事です。

どの位の放射線なら許容出来るか決めるのは難しい事です。

あまり厳しく設定すると私は地球上で生活出来なくなりますし、緩くすると発ガンを始めとしたリスクが増えるからです。

国としてはICRP(国際放射線防護委員会)の勧告をもとにして基準を決めています。

ICRP勧告は近年では1997年、1990年、2007年と出されています。

それにもとに国は基準を決めていますので、表にしてみました。

少し分かりづらいかもしれません。

平成13年に作られた基準と今回の事故で訂正された基準(暫定基準値)です

 

         注:空欄のところは従来基準と同じです。

 

状況

従来基準

2007年ICRP勧告

事故後 23年3月

平成23年3月改定

一般人

 

 

平常時

1ミリシ-ベルト/年

 

 

 

 

事故時

 

監視区域 20~100ミリシ-ベルト/年

区域外復旧1~20ミリシ-ベルト/年

20ミリシ-ベルト/年

(4月)

原発作業者

 

 

平常時

50ミリシ-ベルト/年

 

 

事故時

100ミリシ-ベルト/年

 

250ミリシ-ベルト/年

人命救助時

 

 

500ミリシ-ベルト/年

職業被爆

 

20ミリシ-ベルト/年

 

 

 

要するに従来私達一般人の基準は平常時も事故時も1ミリシ-ベルト/年だったのです。

しかし今回の事故の結果この基準では住むところがなくなってしまうことが予想されました。

幸い2007年のICRP勧告では事故時の基準がありましたのでそれを採用する事になりました。

基準を上げた理由はもう一つ、補償問題の関係です。

先々国や東京電力が補償金を支払う場合に基準が低いと膨大な人数に支払いが発生します。

しかし20ミリシ-ベルトに上げておけば19ミリシ-ベルトまでの地域の人には保証しなくてすみます。

もしかしたらその理由が本音かもしれません。

 

平成23年4月19日、原子力災害対策本部からの「暫定的考えかた」が示され、これに基いて文部科学省は福島県に通達を出しました。

その中に20ミリシ-ベルト/年が出てきますで通達を記載します。

●「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」

 平成23年4月19日 文部部科学省

 別添 2

 1.「学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」

学校等の校舎、校庭、園舎及び園庭(以下、「校舎・校庭等」という。)の利用の判断について、現在、避難区域と設定されている区域、

これから計画的避難区域や緊急時避難準備区域に設定される区域を除く地域の環境においては、

次のように国際的基準を考慮した対応をすることが適切である。

国際放射線防護委員会(ICRP)のPublication109(緊急時被ばくの状況における公衆の防護のための助言)によれば、

事故継続等の緊急時の状況における基準である20~100mSv/年を適用する地域と、

事故収束後の基準である1~20mSv/年を適用する地域の併存を認めている。

また、ICRPは、2007年勧告を踏まえ、本年3月21日に改めて

「今回のような非常事態が収束した後の一般公衆における参考レベル(下記)として、

1~20mSv/年の範囲で考える事も可能」とする内容の声明を出している。

このようなことから、児童生徒等が学校等に通える地域においては、非常事態収束後の参考レベルmSv/年を

学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安しとし、

今後できる限り、児童生徒等の受ける線量を減らしていくことが適切であると考えられる。

  「参考レベル」

  これを上回る線量を受けることは不適切と判断されるが、合理的に達成できる範囲で、線量の低減を図ることとされているレベル。

 

2012年7月14日に国は自然放射線以外の人工放射線の基準を元の1ミリシ-ベルト/年に戻す事にしました。

しかし事故が起きた場合の周辺地域は20ミリシ-ベルト/年(2.28マイクロシ-ベルト/時間)のままです。

上記文部科学省の方針で、福島県の子ども達は20ミリシ-ベルト/年の園庭や校庭で遊んでいます。

危険な事だと思います。

 

「小佐古委員の退任」

政府が基準値を引き上げた事に対し日本中から抗議がでました。

その中で3月16日に事故収束のために内閣官房参与に任命されていた東京大学大学院・放射線安全学の小佐古敏荘教授が

政府に抗議して辞任しました。

4月29日の、20mSvは高すぎると涙ながらに抗議した記者会見は記憶に残る事です。

小佐古教授はもともと国側のいわゆる「原子力村」と言われる中に入る研究者です。

2003年には「原爆症認定集団訴訟」で国側の証人になったくらいですが、

その学者も抗議をしたくらい20mSvは高い数値だと評判になりました。

 

「20ミリシ-ベルトはどんな数字か」

秋田の玉川温泉の話です。

話が飛ぶようですが関連のある話です。

玉川温泉はガン患者が治療のために行く温泉として有名です。

実際に効果があるかは治療デ-タ-がないので不明ですが、毎日多くの患者で賑わっています。

平成24年の冬には雪崩れ治療客が死亡した事でも話題になりました。

その玉川温泉の放射線はどのようなレベルでしょうか?

玉川温泉はラジウム-226が出す放射線のアルファ線を体に浴びるところです。

アルファ線は飛ぶ距離が4センチ位と短いため、岩盤浴として体に受けます。

毎日アルファ線を受けていると体が消耗し具合が悪くなるため

1~2週間で中止し、数ケ月体調を整えてから又玉川温泉に来るのです。

その放射線量は15~20mSv/年くらいと言われています。

ガン治療が目的で途中で具合が悪くなる・・・・

これと同じ線量のところが福島の学校や校庭なのです。

高すぎると考えることが常識的だと思います。

前項の小佐古教授が辞任したのも当然のことだと思います。

 

「チュエルノブイリ法」

1986年のチェルノブイリ事故の5年後、1991年にロシア政府はチェルノブイリ法を決めました。

福島での基準値と比較してみます。

 

年間放射線量

日本の区分

チェルノブイリの区分

50mSv以上

帰宅困難区域

強制避難(徒区別規制)ゾ-ン

20~50mSv未満

居住制限区域(一部帰宅可能)

強制避難(徒区別規制)ゾ-ン

20mSv未満

避難指示解除準備区域

強制避難(徒区別規制)ゾ-ン

5mSv以上

居住可能

移住の義務ゾ-ン

1~5mSv未満

居住可能

移住の権利ゾ-ン

0.5~1mSv未満

居住可能

放射線管理ゾ-ン

注:日本ではかなり緩い基準になっている事がわかります。

 

「福島大学副学長の発言」

年間20ミリシ-ベルトでも大騒ぎをしているのに、100ミリシ-ベルトまでは大丈夫だととの発言を続けている研究者がいます。

県立福島医科大学の山下俊一教授です。

山下教授は1952年長崎で生まれた医師です。

1990年に長崎大学医学部の教授になり、

政府の原子力委員会や原子力損害賠償紛糾審査会委員などを務めていました。

つまり政府の原子力政策を推し進める委員の一人です。

福島の原発事故の直後の2011年4月11日に内定し、7月15日に長崎大学を休職し福島県立医科大学特命教授・副学長になりました。

同時に福島県の放射線医学県民健康管理センタ-長兼ねる事になりました。

原発事故があった福島に何故このような先生が急遽赴任したのか非常に疑問が残るところです。

恐らく大変な被害にあった福島県民を押さえ込むために政府・東電が決めた人事だと思われます。

黄色線の県民健康管理センタ-は今回の事故では福島県医療の頂点に位置する存在です。

福島県内の医師が被爆の問題に良心的に取り組んでもセンタ-で不問にされる事態が起きているはずです。

市民の中ではどこの影響も受けない独立した病院を作るべきだという運動も起きています。

 

さて山下教授の問題発言ですがインタ-ネットでも取り上げられているのでご存知かもしれません。

●2011年3月19日 福島民友新聞 インタビュ-

 影響があるのは100ミリシ-ベルト/年以上の放射線量を1回で受けた時で、将来ガンになる可能性が1万人に1人位増える。

 CTスキャンを1度に10回受けたときの放射線量に相当する

●2011年3月21日 講演 福島テルサ

 100マイクロシ-ベルト/時間を越さなければ健康に影響を及ぼさない

 (注:時間100マイクロシ-ベルトは年間876ミリシ-ベルトになるので異常に高すぎる。 福島県の公式サイトでは翌日10マイクロシ-ベルト/時間と訂正しました。

 しかし山下氏はその後何回か同じ間違いをしています。意識的かもしれません。)

●2011年4月1日 飯館村で村議会議員と職員対象のセミナ-

 今の濃度であれば、放射能に汚染された水や食べ物を1ケ月くらい食べたり飲んだりしても健康に全く問題はありません。

●2011年6月20日「自己判断の覚悟必要」福島民友新聞

 (福島県を)去るのも留まるのも、覚悟が必要・・・・(子どもは)過保護を否定はしないが、子どもには苦労をさせるべきだ。

 ストレスの中できちんと自己判断する苦労。

 ○×の答えがないグレ-ンゾ-ンでリスクと便益を判断する。

 海図のない海に出るのが覚悟の意味です。

●201110月7日 ドイツZDFテレビ「福島原発労働者の実態」

 放射能の影響は、実はニコニコ笑っている人には来ません。

 クヨクヨしている人に来ます。

 これは明確な動物実験でわかっています。

 酒飲みの方が幸か不幸か、放射能の影響少ないんですね。

 決して飲めと言う事ではありませんよ。

 笑いが皆様方の放射線恐怖症を取り除きます

 毎時100マイクロシ-ベルト以下ならいずれにしろ健康には害はありません。

 (注:後で10マイクロシ-ベルトに訂正された)。

 

福島県立医科大学は福島県医療の頂点に位置する存在です。

その為福島県中の医者は異議を言えない状態になっています。

さらに上記のような発言を繰り返す山下氏がセンタ-長にいるため、県民は不信感を持っています。

 

福島県では放射能の影響を調べるために「県民健康調査」をしています。

 調査のための組織ですが、

責任

委託先

協力

外部連携

福島県

福島県立医科大学

 放射線医学県民健康管理実施本部

  放射線医学県民健康管理センタ-

   センタ-長

   副センタ-長

   各課

福島県病院協会

福島県医師会

市町村自治会

各医療機関等

福島県衛生協会

会津大学

各学会、大学

広島大学

長崎大学

放射線医学総合研究所

放射線影響研究所

 この調査は福島県民202万人を対象にして、予算962億3600万円です。

 これだけの予算を組んで、しかも放射線被害の調査です。

 しかしながら当事者、つまり福島県民の回答率は低く、約20%でした。

 やはり県民には福島県立医大、特に山下センタ-長に対する不信感が強いものと思われます。

 

2013年5月21日、国際原子力機関(IAEA)のヒュ-マンヘルス部長の

レティ・キ-ス・チェム氏が福島県立医科大学の客員教授に就任しました。

従来から日本の大学や放射線研究機関とIEAEを結ぶ窓口になっていた医師で、原発推進の人物です。

このことも福島県民から見れば、原発推進のために山下氏同様に県民を押さえ込むための人事ではないかと疑われています。