守屋以智雄論文

以前から原発の危険性を訴えていた金沢大学名誉教授・守屋以智雄氏の論文が発表されました。

火山の研究者として優れた研究をされている方です。

論文は長いので整理して転載します。

 

◎テーマ[噴火と火山]

  雑誌 科学 2014年1月号  岩波書店

 まず日本の火山の図です。

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●世界の火山分布と噴火の性質

 火山はこの地球上に等密度で分布しているわけではなく、

 北米中東部、豪州中西部、ロシア中西部などのように広範囲にわたってまったく火山が存在しない場所もあれば、

 日本列島のように数十kmおきに火山がほぼ全土にわたて噴出している地域もある。・・・・

 地球規模でみると、火山が密集し、爆発的で危険な火山が多い地域として西太平洋の沈み込み地帯は飛び抜けている。

 そこは、ロシアのカムチャッカ半島・千島列島から始まり、日本列島・フィリピン・インドネシア・ニュ-ギニア・・・・・

 以上見たように世界の火山分布は偏っていて、

 とりわけ日本列島はもっとも火山活動が活発で、しかも爆発的噴火が多く発生する、世界でも1,2を争う危険な場所なのである。

●日本列島の噴火特質

 日本列島の火山数は数え方にもよるが約300個、活火山は100個を超える。

 火山体の種類は、成層火山、カルデラ火山、単成火山の3系統に分けられ・・・・

●成層火山

 日本列島の成層火山の寿命は約50万年で、

 その間、噴火様式、噴出物の性質・岩質、火山帯の地形・構造などを変化させながら、一定の経過をたどって発達する。

 第1期

  ・・・・急速に成長、富士山のような急峻な円錐形の火山を形成する。

 第2期

  ・・・・溶岩流の粘性が高くなる。・・・・ガスと共に爆発的噴火が頻発する

  以上の発達第1~2期には、火山体大崩壊が発生しやすくなり、

  山頂に半円形カルデラを残して、崩壊物質が岩屑なだれとなって、

  時速150kmで、高度の10~17倍の距離まで到達する事が多い。

  富士山で発生すれば最大で山頂から64kmの距離まで到達する。・・・・

  富士市の海岸まで30kmの距離であるので・・・・

 第3期

  マグマはさらに粘性が高くなる。

  より爆発的噴火へと移行する

 第4期

  カルデラの形成、軽石・火砕流の噴出、溶岩ド-ムの形成などが数回起こり、50万年の寿命を終える。

原発関連施設破壊に関わる火山現象としては、一つは、成層火山の第1~2期末に起こる火山体大崩壊で、

山麓に大規模な岩屑なだれを流下させ、広範囲にわたって甚大な災害を引き起こす。

二つ目は第3~4期に発生する中規模火砕流が、その通路にあるものすべてを破壊、遠方に運び去ると同時に、

その上に40~50mの厚さで堆積、埋没させてしまう

 

●カルデラ火山

 径10km以上のカルデラを中心にもち、

 その周辺に100km以上の火砕流堆積面が広がることが多い大規模火山で、・・・・

 ・・・・偏西風によって東方に流されつつ降下火山灰となって日本列島のほぼ全域を覆いつくす

 ・・・・阿蘇・姶良カルデラ火山から噴出した火砕流堆積物の厚さは200~300mに達する。

●小型単成火山

 1日或いは数ヶ月継続した1回だけの噴火活動で形成された小型の火山・・・・。

 この種の火山は小規模で、噴火活動もそれほど大きくないため、問題視されてこなかったが、

 火山が周辺に存在しない場所に突然噴火が起きるので、予想がつかず対応に苦慮することになる。

 福井県の原子炉群の真下から突然噴火するということもあり得るので厄介である。

●原発に被害を与える噴火様式

 ◎岩屑なだれ(成層火山1~2期  流走距離60km以下)

  ・・・・火砕流・岩屑なだれが発生、土石流・洪水流に変じて、火山から50km離れた場所でも被害を及ぼす場合がある。

  北海道泊原発はニセコ火山の13km北にあり、岩屑なだれが発生、北に流下した場合、岩屑に埋没・破壊される可能性がある。

  富士山で岩屑なだれが南麓の富士市に流下した場合、津波が浜岡原発を襲う危険性が考えられる。

  伊豆諸島利島・御蔵島・神津島・八丈島西山で岩屑なだれがが海中に突入すれば、

100~200km離れた浜岡原発を津波が直撃する。

 ◎成層火山(3~4期)中規模火砕流

・・・・むつ燧ケ岳・恐山が東通原発や六ヶ所村貯蔵施設に近く、火砕流噴出時には無事に済まされない事態が発生する。

妙高火山で火砕流噴火が発生した場合、噴火規模で異なるが、柏崎刈羽原発まで到達するかは微妙だが、

冬季に積雪を融かして大規模土石流に変身した場合、原子炉は海まで押し流され

日本海が大規模汚染を蒙る可能性を考えておかなければならない。

 ◎カルデラ火山からの巨大火砕流

カルデラから30~40kmの高空まで軽石を噴き上げ、四方へ広がりながら

100km以上離れたところまで火砕流となって到達する

1000℃近い高温の軽石とそれが破砕された細粒火山灰の混合物からなる火砕流は

時速150km以上、新幹線に近い速度で流動、・・・・

 ◎降下火砕物による冷却水補給不全

巨大噴火であろうと小規模噴火であろうと、

火山灰が10cm以上の厚さで原発周辺に降下した場合、

原子炉の冷却水の補給が困難になるため、

メルトダウンが発生→原子炉の爆発→放射性物質が広範囲に飛散という事態が発生

住民全員の非難を余儀なくされる危険性が大きい。

九州6カルデラ火山中の1個が巨大噴火すれば、

伊方・玄海・川内の3原発は完全に破壊され、西南日本全体が放射能汚染で、

万年単位で事実上永久に立ち入り禁止区域になる。

八甲田・十和田カルデラ火山のいずれかで巨大噴火が起った場合、

北海道の泊原発・下北半島の東通原発・六ヶ所村・女川原発などが破壊されよう