コレステロ-ルを含む食品の摂取制限解除 1
コレステロ-ルは少し高めのほうが
安全であことは少しずつ常識になりつつあります。
食品に含まれるコレステロ-ル、
つまり卵、ウニ、イクラ等の制限も
必要ないようにも思えます。
アメリカや日本でもやっとその兆候が出始めました。
● アメリカ・食生活ガイドライン諮問委員会
「2015年度報告書」 2015年2月19日発表
・・・・これまでのガイドラインでは、
コレステロ-ルの摂取は1日300ミリ以内に
抑えることを勧告してきた。
2015年版のガイドラインには
この勧告は盛り込まない。
食事によるコレステロ-ルの摂取と
血清(血中)コレステロ-ルの間に
特段の因果関係はないことが実証されている。
コレステロ-ルは過剰摂取を
懸念すべき栄養素とは見なさない・・・・
日本でもコレステロ-ルの摂取制限を
撤廃する動きが出ています。
以下、厚生労働省の報告を中心に書きます。
「日本人の食事摂取基準(2015年度版)
策定検討会」報告書 厚生労働省
● 基本的事項
コレステロ-ルは体内で合成できる脂質であり、
12~13mg/kg体重/日(体重50kgの人で600~650mg/日)
生産されている。
摂取されたコレステロ-ルの40~60%が吸収されるが、
個人間の差が大きく遺伝的背景や代謝状態に影響される。
このように経口摂取されるコレステロ-ル
(食事性コレステロ-ル)は体内で作られる
コレステロ-ルの1/3~1/7を占めるのに過ぎない。
また、コレステロ-ルを多く摂取すると
肝臓でのコレステロ-ル合成は減少し、
逆に少なく摂取するとコレステロ-ル合成は増加し、
抹消への補給が一定に保たれるように
フィ-ドバック機構が働く。
このためコレステロ-ル摂取量が
直接血中コレステロ-ル値に
反映されるわけではない。
● 目標量の設定
動脈硬化関連疾患に関しては、
卵(鶏卵)はコレステロ-ル含有率が高く、
また日常の摂取量も多いため、
卵の摂取量と疾患リスクを調べることにより、
コレステロ-ル摂取による
疾患リスクが推定されている。
卵の摂取量と動脈硬化性疾患との関連を調べた
2013年のメタ・アナリシスでは、
卵の摂取量と冠動脈疾患及び脳卒中罹患との
関連は認められていない。
日本人を対象にしたコホ-ト研究の
NIPPON DATA80でも、
卵の摂取量と虚血性心疾患や
脳卒中による死亡率との関連はなく、
1日に卵を2個以上摂取した群と
ほとんど摂取しない群との
死亡率を比べても
有意な差は認められていない。
卵の摂取量と冠動脈疾患患者との
関連を調べたJPHC研究でも、
卵の摂取量と冠動脈罹患との
関連は認められていない。
また糖尿病患者においても、
卵の摂取量と冠動脈疾患罹患との
関連は認められておらず、
横断的な卵の摂取量と
糖尿病有病率との関連も認められていない。
卵の摂取量ではなく、
総コレステロ-ル摂取量と
各疾患の死亡率との関連を調べた
日本人を対象にした観察研究が一つある。
ハワイ在住日系中年男性(45~68歳)を
対象とした観察研究では、
食事性コレステロ-ル摂取量と
虚血性心疾患死亡率との間に
有意な正の相関を認め、
325mg/1,000 kcal以上の群で
虚血性心疾患死亡率も増加を認めている。
ただし、飽和脂肪酸摂取量で
調整されていないため、
コレステロ-ル摂取自体が原因ではなく、
同時に摂取する飽和脂肪酸摂取量が
影響している可能性がある。・・・・・
コレステロ-の摂取量は低めに抑えることが
好ましいものと考えられるものの、
目標量を算定するのに充分な
科学的根拠が得られなかったため、
目標量の算定は控えた。
ただし、コレステロ-ルは
動物性たんぱく質が多く含まれる
食品に含まれるため、
コレステロ-ル摂取量を制限すると
たんぱく質不足を生じ、
特に高齢者において低栄養を生じる
可能性があるので注意が必要である。
注:メタアナリシス meta-analysisi
複数のランダム化比較試験の結果を統合し、
より高い見地から分析する
メタ分析、メタ解析とも言われる。
注:コホ-ト研究
研究対象と対象外の集団とに分けて
一定期間追跡、観察する研究
JPHC研究
コホ-ト研究の一種で多目的なコホ-ト研究