新型コロナウイルスと免疫 3

イルスの性質」

ウイルスは他の微生物とかなり異なっています。 

大きさは20~300nm(ナノメ-トル・1億分の20~300メートル)位しかありません。 

あまりにも小さいため他の微生物の様な、

細胞壁・細胞膜・細胞質・核の様な構造物がありません。 

遺伝情報と外側のカバ-(エンベロップ)だけ持っています。 

遺伝情報つまり設計図面だけしかない状態です。 

構造物つまり増殖装置も何もないため、

図面だけでは増殖も出来ないのです。 

ですから人工的に栄養を与えても自らは増殖できません。

 

「レセプタ-」

感染する場合必ず決まった場所から侵入します。

人間に限らずウイルスが細胞に取り付く時には場所が決まっています。

その場所をレセプタ-と言います。

レセプタ-から細胞内部に侵入し、更に細胞の遺伝子に侵入し、

素知らぬ顔をしてその細胞の機能を利用して

子孫を大量生産するのです。 

わかりやすく言えば図面だけ持って、

他人の工場に侵入し勝手に部品を作るようなものです。 

細胞のように2個、4個、8個・・・・と増えるのではなく、

一気に生産する為急速にウイルスが増えます。

 

「ウイルスの増殖」

増殖の工程を説明します。

①吸着 ウイルスは私たちの細胞の特定の場所に付着します。

 特定の場所はレセプタ-と言います。

 ウイルスの表面構造とちょうど逆の構造をした部分が

 レセプタ-になります。

 つまり鍵と鍵穴と同じです。

 ウイルスの表面の形が鍵で細胞のレセプタ-が鍵穴です。

 ですからウイルスが体内に入っても、

 レセプタ-が合わなければ細胞に入れず、感染はしません。

  →コロナウイルスやインフルエンザウイルスに対する

   鍵穴は呼吸器の上気道 

 新型コロナウイルスの場合は呼吸器の下気道?      

  →ノロウイルスに対する鍵穴は腸壁      

  →エイズウイルスに対する鍵穴は白血球

②侵入 レセプタ-に付いたウイルスは

    細胞の食作用で細胞内に取り込まれる    

 Ⅰ型感染 レセプタ-から入る    

 Ⅱ型感染 感染細胞から隣の細胞に直接感染する→感染拡大

③脱穀 ウイルスの表面カバ-が取り除かれ裸の核酸(遺伝子)になる

④合成 遺伝情報はメッセンジャ-RNA(mRNA)に転写され、

    mRNAは細胞の機能を利用して大量に自己を複製する

⑤組立 出来た遺伝子に表面カバ-がついて

    新しいウイルスが大量に完成する

⑥細胞外い出る 細胞膜から大量にウイルスが外出て隣の細胞に入る。 

⑦ ①から⑤を繰り返して、感染は拡大する。

 

これがウイルス増殖の仕組みです。

インフルエンザなどで利用される抗ウイルス薬は

①~⑥までのどこかを妨害するのです。 

ウイルス感染の結果生じる肺炎や下痢などの

病気を治すことは出来ません。

繰り返しますが治すのは免疫力です。

 

☆ナファモスタット     ①を妨害する  

ゾフル-ザ、アビガン、レミデシビルなど ④を阻害する   

タミフル、リレンザなど  ⑥を阻害する     

☆各種ワクチン  ①②を阻害すると思われます

 

「コロナウイルスの模式図」

ウイルスの遺伝情報はヌクレオカプシドにあります。

下図のヒモのようなものです。

 

 

その外側はエンベロ-プという被膜で包まれています。

さらに外側にはスパイクという突起があります。

エンベロ-プや被膜の表面にある蛋白や糖蛋白の構造が

私たちの細胞の鍵穴レセプタ-と合致すると

細胞内に侵入するのです。

この模式図はコロナウイルスの形で、そ

の他ウイルスには色々な形があります。

       

「ウイルスの人工培養」

ウイルスの遺伝子には図面だけしかないので

自分では増殖できないと書きました。

しかし実験・研究やワクチンを作るためには

ウイルスの数を増やす必要があります

その場合感染をしやすい(感受性がある)

動物・孵化鶏卵・培養細胞を使います。

マウス、モルモット、ウサギ、ハムスタ-・・・・

中でもインフルエンザワクチンを作る時に利用される

孵化鶏卵(有精卵)が有名です。

受精卵を38℃の孵卵器で発育させた5~11日位の卵が使われます。

 

「増殖時間と量」

1個の細胞に1個のウイルスが感染してから

①~⑥までの時間は細胞やウイルスの種類で異なりますが、

一般には10時間ぐらいとされています。

また増殖された子孫ウイルスは数百万~数千万個と言われます。

そして細胞の方は死滅し、痰や老廃物として体内で処理されます。

くしゃみや咳で排出されるウイルスの量ですが、

くしゃみで200万個、咳で10万個といわれています。

 

「ウイルスの寿命」

インフルエンザウイルスの寿命については多くの研究があります。

有名なのは1961年のG.J.ハーパ-の研究です。

分かりやすく表に整理しました。

 湿度温度6時間後のウイルス生存率
青い線20~25%7~8℃約63%
20.5~24℃約66%
32℃約15%
グリ-ンの線49~51%7~8℃42%
20.5~24℃3~5%
32℃約0%
赤い線81~82%7~8℃35%
20.5~24℃3~5%
32℃0%

この研究ではインフルエンザウイルスは

寒くて乾燥している時に流行するという証明になります。

しかし最近ではどこかに付着したウイルスは

数日間生存するという研究もありますので一般論です。

 

「ウイルスの変異・新型」

遺伝子は他の生物と同じように

遺伝子複製の過程で10万から1億回に1度変異すると言われます。

これは微生物だけではなく私たちも同じことが言われます。

人間でも受精卵が無事に出産までこぎつけるのは100%ではありません。

1個の受精卵から細胞が分割や分裂を繰り返す時に

一定の確率で変異を起こすといわれます。

これが流産や奇形の原因になるのかもしれません。

微生物でも同じことですが、

さらに攻撃を受けた時にそれをかわすために

変異して新型が生まれると思われます。

 ◎過度の殺菌等で微生物を攻撃した時  

 ◎タミフルやゾフル-ザでウイルスの働きを妨害したとき

    →耐性ウイルス  

 ◎不必要な抗菌剤(抗生物質)を使用したとき

    →耐性菌