国の機関や軍関係の発見された文書を年代別に整理します。
1937年(昭和12年)は第二次上海事件から南京陥落の年です。
その時大規模な軍による強姦事件が多発し、
その対策として軍は慰安婦政策を拡大させました。
●時局利用婦女誘拐被疑事件に関する件
(原文カナ・少し読み易くしました)
今田真人「極秘公文書と慰安婦強制連行・三一書房」参考
1938年(昭和13年)2月7日
和歌山県知事(警察部長)→内務省警保局長殿
(県下各警察署長殿)
当県下田辺警察署に於て標記事件発生
之が取調状況左記の通りに
これあり候条この段及び申し報せ候なり
(県下は参考の上取締に資すると共に
事後同様犯罪ありたる場合は
捜査着手前報告せらるべし)
記
1. 事件認知の状況
昭和13年1月6日午後4時頃
管下田辺町大字神子浜通通称文里飲食店街に於て
3名の挙動不審の男徘徊しあり
注意中の処内2名は
文里水上派出所巡査に対し疑わしき者に非ず
軍部よりの命令にて上海皇軍慰安所に送る
酌婦募集に来たりたる者にして3千名の要求に対し
70名は昭和13年1月3日陸軍御用船にて
長崎港より憲兵護衛の上送致済なりと称し
立ち去りたりとの巡査報告あり
真相に不審を抱き情報係巡査をして捜査せしむるに
文里港料理店萬亭中井駒之助方に登楼し
酌婦を呼び酌せしめつつ上海行を薦めつつありて
交渉方法に付無知なる婦女子に対し
金儲け良き点軍隊のみを相手に慰問し
食料は軍より支給する等誘拐の
容疑ありたるを以て被疑を同行取締を開始したり
注:軍の命令により軍護衛で上海に送った。
2 .事件取調の状況
被疑者を取締るたるに
大阪市西区中ノ丁21 貸席業 佐賀今太郎 当45年
大阪市西区中ノ丁1-389 貸席業 金澤甚右衛門 当42年
海南市日方町603 紹介業 平岡茂信 当40年
と自供し金澤甚右衛門の自供に依れば昭和12年秋頃
大阪市西区十返町 会社役員 小西■(判読不可) 夫
神戸市福原 貸席業 中野某
大阪市西区中ノ丁 貸席業 藤村正次郎
の3名は陸軍御用商人氏名不詳と共に
上京し徳久少佐を介し荒木大将、頭山満と会合の上
上海皇軍の風紀衛生上年内に内地より
3千名の娼婦を送る事となり
詳しき事情を知らさるが
藤村、小西両名にて70名を送りたるが
九条警察署長、長崎県外事課に於て便宜を受けたり
注:警察署や県の外事課が協力しています
上海に於ては情交金将校5円、下士弐円にて
2年後軍の引揚と共に引揚くるもににして
前借金は8百円までを出し
募集に際し藤村正次郎の手先として
和歌山県下に入り込み
勝手を知らざる為右事情を明かし
平岡茂信に案内せしめ御坊町に於て
■■■■■ 当26年
■■■■■ 当28年
の両名を■■■■■は前借金470円、
■■■■■は前借金362を支払ひ
南海市平岡茂信方に預けありと自供せり
中略
「皇軍将兵慰安婦渡来につき便宜供与方依頼の件」
皇軍将兵慰安婦渡来に付き便宜方依頼の件
本件に関し前線各地に於ける皇軍の進展に伴い
之が将兵の慰安方に付き関係諸機関に於て考究中のところ
先ごろ当館と陸軍武官室憲兵隊合議の結果
施設の一端として前線各地に軍慰安所
(事実上の貸座敷)を左記要領に依り設置することとなれり
記
領事館
(イ)営業願出者に対する許否の決定
(ロ)慰安婦女の身元及びこの業に対する一般契約書手続
(ハ)渡航上に関する便宜取り計らい
(ニ)営業主並び婦女の身元その他に関し
関係諸官署間の照会並びに回答
(ホ)上海到着と同時に当地に滞在せしめさるを
原則として許否決定の上直ちに
憲兵隊に引き継ぐものとす
憲兵隊
(イ)領事館より引継を受けたる営業主
並びに婦女の就業地への輸送手段
(ロ)営業者並びに稼業婦女に対する保護取締
武官室
(イ)営業場所及び家屋等の準備
(ロ)一般保健並びに検黴に関する件
右要領に依り施設を急ぎ居るところ
既に稼業婦女(酌婦)募集の為
本邦内地に並びに朝鮮方面に旅行中の者あり
今後も同様要務にて旅行するものあるはずなるが
これ等の者に対しては当館発給の
身分証明書中に事由を記載し
本人携帯せしめ居るに付き乗船その他に付き
便宜供与方お取り計らいあいなりたし
なお上海到着後直ちに就業地に赴く関係上
募集者抱え主又はその代理人等には
それぞれこの業に必要なる書類を交付し
あらかじめ書類の完備方指示し置きたるも
整備を欠く者おおかるべきを予想さるると共に上
海到着後煩雑なる手続きを繰り返すことなきよう・・・・・
「前線陸軍慰安所営業者に対する注意事項」
前線陸軍慰安所に於て稼業する
酌婦募集赴き上海に戻る時は
あらかじめ左記必要書類を整え
当館に願届許可を受けるべし
以下中略
「大阪九条警察署長よりの田辺署長宛回答」
述ぶるば此の度上海派遣軍慰安所従業酌婦募集方に関し
内務省より非公式ながら当府警察部長へ依頼の次第もあり
当府に於ては相当便宜を与え既に
第1回は本月3日渡航せしめたる次第にて
目下貴管下へも募集者出張中の趣なるが
左記の者は当署管内居住者にして
身元不正者に非ざる者関係者より願出候につき、
これが事実に相違なき点のみ
小職において証明書き致し候・・・・
(以下省略)
●支那渡航婦女子の取扱に関する件
(原文カナ、少し読み易くしました)
同上今田論文から
1938年(昭和13年)2月23日
内務省警保局長→各庁府県長官(除 東京府知事)
内務省発警第5号
最近支那各地に於ける秩序の回復に伴い
渡航者著しく増加しつつあるも
これ等の中には同地に於ける料理店、飲食店、
「カフェ-」又は貸座敷類似の営業者と連携を有し
これ等の営業に従事することを目的とする
婦女少なからざるものあり
更に又内地に於てこれ等婦女の
募集周旋を為す者にしてあたかも
軍当局の了解あるかの如き言辞を弄する者も
最近各地に頻出しつつある状況にあり
婦女の渡航は現地に於ける実情に鑑みる時は
蓋し必要已むを得ざるものあり
警察当局に於ても特殊の考慮を払い
実情に即する措置を講ずるの要ありと認めらるるも
これら婦女の募集斡旋等の取締りにして
適性を欠かんが帝国の威信を傷つけ
皇軍の名誉を害するのみに止まらず
銃後国民特に出征兵士遺家族に
好ましからざる影響を与えると共に
婦女売買に関する国際条約の趣旨に悖ること無きを以て
かたがた現地の実情その他各般の
事情を考慮し自今これが取締りに関しては
左記各号に準拠することといたしたく依命この段及び通牒候
記
1. 醜業を目的とする婦女の渡航は
現在内地に於て娼妓その他事実上醜業を営み
満21歳以上かつ花流病その他
伝染性疾患なき者にして
北支、中支方面に向かう者に限り
当分の間これを黙認することとし
昭和12年8月依頼三機密合3776号
外務次官通牒に依る身分証明書を発行すること
2. 前項の身分証明書を発給するときは
稼業の仮契約の期間満了し
又はその必要なきに至る際は
速やかに帰国するようあらかじめ諭旨すること
3. 醜業を目的として渡航せんとする
婦女は必ず本人自ら警察署に出頭し
身分証明書の発給を申請すること
4. 醜業を目的とする婦女の渡航に際し
身分証明書の発給を申請するときは
必ず同一戸籍内にある最近尊属親、
尊属親なきときは戸主の承認を得せしむる事とし
もし承認を与うべき者なき時は
その事実を明らかならしむること
5. 醜業を目的とする婦女の渡航に際し
身分証明書を発給する時は
稼業契約その他各般の事項を調査し
婦女売買又は略取誘拐等の事実なきよう特に留意すること
6. 醜業を目的として渡航する
婦女その他一般風俗に関する
営業に従事することを目的として
渡航する婦女の募集斡旋等に際して
軍の了解又はこれと連絡あるが如き言辞
その他軍に影響を及ぼすが如き言辞を
弄する者は総て厳重にこれを取締ること
7. 前号の目的をもって渡航する
婦女の募集周旋等に際して広告宣伝をなし
又は事実を虚偽もしくは誇大に伝ふるが如きは
総て厳重にこれを取締ること
又これが募集周旋等に従事する者については
厳重なる調査を行い
正規の許可又は在外公館等の発行する
証明書等を有せず身元の確実ならざる者は
これを認めざること
この頃はもともと売春をしていた女性を
慰安婦として募集していたことが分かります。