帝銀事件

闇の部分を象徴する事件に戦後

昭和23年1

月に起きた帝銀事件があります。

帝国銀行椎名町支店で青酸化合物によって

12人が殺害され現金が奪われた事件です。

犯人として逮捕された画家・平沢貞通氏は

死刑宣告を受けながら死刑執行されずに

95歳で刑務所内で死亡しました。

何故死刑執行されなかったのか、

何故捜査が途中でうやむやになったのか、

そして平沢が本当に犯人なのかどうかの

疑問が今でもささやかれています。

実は捜査当局は軍の防疫給水部つまり

731部隊関係者を調査していたのです。

そして旧軍の調査に入ったところで

捜査は打ち切りになって平沢が逮捕されたのです。

アメリカが731部隊を免責するため、

GHQが捜査当局に

圧力をかけたのではないかという噂もあります


実は当時捜査一課の第一係長甲斐文助は、

4月27日に石井四郎に会っています。

その時石井はこう話したと言います。

「おれの部下に犯人がいるような気がする。

15年、20年たってもおれの力で軍の機密は厳格であるので、

なかなか本当のことは言わぬだろう・・・」

真相は今でも闇の中です。

 

甲斐文助は11冊の日記を残しています。

その中に別巻「秘」と記された旧軍秘密機関一覧表があります。

完璧ではないとしても、一介の捜査係長が

軍の闇の部分をここまで調べ上げたことは驚きです。

もしかしたらここまで調べ上げ、

パンドラの箱を開きそうになったので

圧力がかかったのかもしれません。

 

一覧表を掲載します。

●旧軍秘密機関一覧表  

   〇印は関係深きもの  

   海軍関係は未着手なるも考慮を要す

 参謀本部謀略戦特務機関
 第二造兵廠「板橋」青酸ガス弾
 第一造兵廠「広島」 青酸ガス製造
 衛生材料廠青酸ガスの貯蔵
 陸軍獣医学校軍馬軍犬防疫毒物研究
 歩兵学校マスク関係
 砲兵学校弾丸内充填研究
 工兵学校防空壕
習志野学校ガスの防禦並使用方法
 陸軍病院 
憲兵隊個人謀略
南方軍防疫給水部松井蔚関係(注)
1644部隊「中支軍防疫給水部」防疫給水細菌謀略
731部隊「関東軍防疫給水部」防疫給水細菌謀略
 習志野学校研究部青酸ガス研究
 516部隊 満洲チチハル青酸ガス実施
 526部隊満洲フラルギ青酸ガス実施 
 100部隊関東軍軍馬防疫廠
 陸軍軍医学校防疫給水部員養成
 中野学校特務機関員養成
 86部隊特設憲兵隊
 陸軍糧秣廠青酸解毒剤(ハイポ)研究
 参謀本部二部情報謀略
 兵器行政本部青酸ガス並毒物兵器の取り扱い
 陸軍技術本部第一研究所火砲弾薬
 陸軍技術本部第三研究所工兵器材
陸軍技術本部第六研究所青酸ガス研究
 陸軍技術本部第八研究所防毒科学材料の研究防毒科学材料の研究
陸軍技術本部第九研究所毒物の研究
 東京憲兵隊特設本部中野実験隊「憲兵」毒物の研究
 海軍軍医学校東京築地
 海軍造兵廠神奈川県平塚

 

帝銀事件の前年安田銀行荏原支店で

似たような事件がありました。

その事件は未遂に終わったが、

その時残された名刺は

厚生技官松井蔚(しげる)となっていました。

実在の人物で無罪でしたが、

松井はかって南方軍防疫給水部(岡9420部隊)に

勤務していたことから、

捜査が秘密組織に進んでいったのです

 

戦後まもなく調べた努力に感心しますが、

それよりも日本軍はこんなに

多くの秘密の部分を持っていたのかと驚かされます。

これ以外にもあるかもしれませんが、

全部ではないにしても多くの組織が

細菌や毒ガスに関係していたことは事実です。