国の関与 4

● 支那渡航婦女に関する件 (原文カナ)

今田真人「極秘公文書と慰安婦強制連行・三一書房」参考

 1938年(昭和13年)6月7日

 在済南総領事→外務大臣

 条約局機密第245号

本件に関し5月10日付条三機密合723号

貴信御申越の趣敬承よって当館管内に於ける

取締状況等別記の通り報告す

 ⑴本年1月当館再開後当地に於ける

  特殊婦女すなわち芸酌婦の数は

  皇軍の進出に伴い逓増し来り 

  事変前わずかに46名にすぎさりしものが

  5月末現在において

  料理店業者48軒(内地人30鮮人18)

  芸酌婦438名(内地人芸妓101同酌婦110鮮人酌婦228)の

  多きに達せり  

  これ営業者が皇軍の駐屯地目指して

  蝟集し来るものなること言うを待たざるも

  先般来某方面に於ては済南に於ける

  兵数の増加と将来皇軍の前進する場合を見越して

  4月末迄には少なく共当地に500の特殊婦女を集中し置き

  徐州攻略後に於て同方面に多数を進出せしめ度き希望もあり

  かつまた実情やむ得ざる次第にて

  前記の如き増加を見たる次第なり

 ⑵⑶省略

 ⑷以上の如き特殊婦女の増加に対し

  当地関係方面に於ても過多なりとの

  見方を為すものあるところ 

  皇軍の徐州占領後当地特務機関との

  打合せの結果当館の証明書の証明ある者に限り

  5月22日以降同月末までに

  軍用車に便乗南下(徐州入城は当分許されず

  臨城、克州、済寗に止らしむ)したる

  特殊婦女数は186名にして 

  その他当地に待機し居り 

  徐州攻略前より密かに南下したる

  婦女の数は約300名と称せらるる次第にして

  当地に於ける特殊婦女の数は

  右事情により近く相当減少するものと

  一般に観察せらる

以下省略

 

● 支那渡航婦女の取締に関する件(原文カナ・少し読み易くしました)

上記:今田論文から

1938年(昭和13年)6月29日

在青島総領事→外務大臣

機密第5■3号

本件に関し5月16日付条三機密合

第723号貴信を以て御来訓の趣敬承

6月末現在青島に於ける復帰居留民は

内地人1万2821名朝鮮人1367名

合計1万4188名にして

昨夏引揚当時の人口の8割強なるが

その後も毎船復帰者少なからず

近く事変前の総数1万6500名に達するのみならず

7月1日以降復帰者以外の者に対しても

渡航を許可せらるることなるを以て

年内に2万を突破すること容易なりと

思考せらるるところ

今日迄一般渡航者に対し制限を加えられたる結果

当地に新規に渡航せる特殊婦女数

比較的少数にして6月中旬現在の特殊慰安婦数は

芸妓      219名

酌婦      243名

カフェ-女給  236名

ダンサ-    118名

合計 816名

にして事変前と略同数なるが

当館警察署に於てはこれ等特殊婦女に対し

厳重に保護及取締を加え居り

当地に関する限り今日まで別段問題を惹起し居らず

一方当地海軍側は陸戦隊並

第4艦隊乗組兵員を考慮し

芸酌婦合計150名位増加を希望し居り 

陸軍側は兵員70名に対し

1名位の酌婦を要する意向なるが 

当地は警備軍の移動頻繁にして

所要特殊婦女数の算定困難なりとのことなるも

営業者等の希望を参酌し

今後さらに芸妓40名酌婦50名(内鮮妓15名)位

新規渡航を御許可相成差支なきものと思料せらる

右報告申進す

本信送付先 北京(総)、上海、天津、済南、芝罘(しふう)

   注:慰安婦の数が問題になることがあります。

     兵隊の言葉では「ニクイチ」つまり

     兵隊29人に慰安婦1人等といわれます。

     この文書では「陸軍側は兵員70名に対し

     1名位の酌婦を要する」とあります。

     酌婦とは慰安婦です。 

 

● 支那渡航婦女の取締に関する件

      (原文カナ・少し読み易くしました)

  上記:今田論文から

1938年(昭和13年)6月30日

外務省条約局長→内務省警保局長

本年2月23日付貴局長発各庁府長官宛

訓令に関し在支各公館所在地に於ける

実情を調査せしめ

本件に関する意見並に資料を求められたるところ

今日まで回報ありたるもの

4館に過ぎざるも取り合えず

右結果取り纏め左の通り報告す

 1. 省略

 2. 山海関に於いては

  「同地経由北支に赴く婦女にして

  醜業に従事するものの内には

  朝鮮人相当多く 

  その数漸次増加の傾向にあるところ 

  これ等は前線に活動するは勿論

  都会地にても稼業をし居り

  内地よりの渡航者を或程度制限するも

  あまり需要に影響することなかるべし」とす 

  済南付近は別表の如く

  事変前の約10倍の醜業婦あるも

  現在に於いては事情已むを得ずとす。

  また徐州陥落前より密かに南下する

  婦女300名ありと称せられ

  5月22日以降軍用車にて南下せるもの186名あり

以下中略

 3.取締に関する意見

  (イ)醜業に従事せしむる婦女を

   女給、女中等の名義にて

   内地官庁の身分証明書を受けしめ

   雇入るるもの又は婦女の無智に付入り

   実情を隠蔽し雇入れ醜業に

   従事せしむる等の事実あるのみならず

   しかも通過地に於ては内地官庁の

   身分証明書を携行せりものを

   行先地に於て醜業に従事する

   疑いありとて入国を拒否すること困難なるに付

   内地官庁に於て証明書発給の際

   特に行先に於ける稼業をも考慮し下付することを要す

以下省略

 

●支那渡航婦女の取締に関する件回答 

        (原文カナ・少し読み易くしました)

上記:今田論文から

1938年(昭和13年)7月1日

在南京総領事→外務大臣

機密第218号

主題の件に関し5月10日付条三機密合第723号

貴信を以て御申越の処南京に関する限り

この種の渡来者は現在に於ても尚

過多とまでは行かず需要を充たし得ざる有様にて

各料理店共午後8,9時ともなれば

俗に言う箱切れの盛況なり 

されどその営業対象たる軍関係者

今後ともその数を現状に

維持し居るものなるや否や保証限りに非ず 

かつ・・・・今日までのところ我領事館方面の

進出は軍部方面より1日遅れたるため

自然軍兵站部或いは軍特務部等各方面に於て

随時許可または施設をなさしめたる為

現在は相当障害に逢着し 

現に内地親元より捜査願い又は

本人或いは親元よりかかる

醜業不承諾による帰郷取計い願い等

殺到の状況なればかかる現状に鑑み

今後内地よりの出航許可には

左記の条件を具備せしめらること必要なり

 1. 外地に於ける酌婦稼業とは

  内地に於ける娼妓稼業なること

  本人並びに親権者に於て承知のこと

注:外地では酌婦とは慰安婦の事です

  これは詐欺つまり強制連行に当たります

 2. 現在に於いては芸妓稼業又娼妓稼業と大差なく

  然れざれば前借金返還にも困難なること多き事

注:これも上と同じ詐欺つまり強制連行に当たります

 3. 親権者の醜業婦稼業の承諾書を

  携帯し居ること(承諾書の印は印鑑証明書添付のこと)

 4. 雇用契約の契約条件は醜業婦その者の為

  不利益ならざるよう十二分に完備し居ること

 5. 花柳病又はその他に於ても特に健康たること

 6. 上海、南京等各地共事変前の

  この種営業者以外に抱えらるる場合は

  営業所を転々移動することあるべきこと承諾のこと

 7. 収入は内地の一般より多少ともよろしき様なるも

  衣類化粧品等身廻品はは内地よりも

  著しく高価にして2倍3倍の価格珍しからず 

  収入評価のみにては誤算多きこと

 8.今後現在の如き好景気は永続性に乏しきこと

右御参考迄回答申進す