国の関与 3

● 済南行旅客の制限撤廃に関する件 1938年3月1日

    朝鮮総督府外務課「昭和13年、

    昭和14年旅券例規」という公文書から

  北支那派遣軍事務官室田寅雄から

    朝鮮総督官房外務部長 宛  

原文カナ・意訳

・・・・本年1月14日より、 

一般旅客の済南旅行を許可する事としたが、

これは特に身元を厳選して

特務機関名の許可証を発行することとし・・・・

その期間に天津出張所で旅券許可証を発給した人数は、

   内地人  731名(内 女173名)

   朝鮮人  176名(内 女115名)

    計   907名 

      (このほかに軍憲兵隊で発給した者もある)

解説:在留邦人がほとんどいなく、 

   厳しく旅行制限されていた済南に 

   特務機関や憲兵の優先許可で

   女性が渡航しているのは 

   軍慰安婦と言うことになります。

 

● 軍慰安所従業婦等募集に関する件

  (原文カナ・少し読み易くしました)

  今田真人「極秘公文書と慰安婦強制連行・三一書房」参考

 1938年(昭和13年)3月4日

陸軍省副官→北支方面軍・中支派遣軍参謀長

   陸支密第745号

副官より北支方面軍及び

  中支派遣軍参謀長宛通牒案

支那事変に於ける慰安所設置の為

内地に於てこれが従業婦等を

募集するに当たりことさらに軍部了解の

名義を利用し為に軍の威信を傷つけ

かつ一般民の誤解を招く恐れあるもの 

或いは従軍記者、慰問者等を介して

不統制に募集し社会問題を

惹起するところあるもの 

或は募集に任ずる者の人選適切さを欠き

為に募集の方法誘拐に類し

警察当局に検挙取調を受けるものある等

注意を要するもの少なからざるに付いては

将来これ等の募集等に当たりては

派遣軍に於て統制し之に任ずる人物の選定を

周到適切にしその実施に当たりては

関係地方の憲兵及び警察当局との連携を密かにし

次て軍の威信保持上並びに社会問題上

遺漏なきよう配慮相成たく依命通牒す

 

● 在留邦人の各種営業許可及び取締りに関する

 陸海外三省関係者会同決定事項

 1938年4月16日 在南京領事館 (原文カナ・意訳)          

 出席者  

陸軍側  

   兵站司令官    千田大佐    

   第3師団参謀   栗栖中佐 

   第3師団軍医部   高原軍医中佐

   南京特務機関   大西少佐

   南京憲兵隊    小山中佐  

  海軍側  

   海軍武官     中原大佐                          

   嵯峨艦長     上野中佐               

  領事館側           

   花輪総領事

   田中領事

  清水警察署長

        以下省略

会議で話し合われた要点

・・・・陸海軍に属する酒保および

慰安所は陸海軍の直轄経営監督するものなので

領事館は関与しない。・・・・

将来兵站部の指導により作られるべき

軍専属の特殊慰安所は憲兵隊の取締まるところにて・・・・

解説:これは軍と領事館の会議です。 

   この会議の結果、慰安所に関しては

   領事館の手が届かないようになりました。 

   つまり政治のコントロ-ルを外れて

   軍が仕切るようになったのです。 

   そして「軍直営の言葉も見えます。

 

● 支那渡航婦女の取扱に関する件  機密第213号    1

 38年5月12  (原文カナ・意訳)               

  在、山海関 副領事 佐々木高義から

  外務大臣 広田弘毅宛文書

2月23日付「内務省警保局長発、

各庁府県長官宛通牒」によれば

醜業を目的とする婦女の支那渡航は

満21歳以上の者となっているので

当館でも、鋭意取締りをしているが、

本年10月当地を通過して北京に行く途中の

旭川の業者が連れている芸妓4名の内

3名はいずれも21歳未満にして、

かつ醜業を目的としている事は極めて明白である。

それにもかかわらず旭川警察署長発行の

身分証明書を持参していたため仕方なく通過させた。

ほかにもこれに類する事2~3あり。

当方の今後の取締りの上に種々の影響を

及ぼす恐れがあるため、

調査の上お返事を頂きたい。

(その内3名は15歳、16歳、17歳でした)

 解説:いくら領事館で取り締っても、

    内地の警察でさえ違法な募集に加担している。 

    調査をして欲しいという依頼です。 

    日本人女性を募集することですら

    違法なことをしたのですから

    朝鮮人女性の募集はもっとひどかったことになります。

 

● 支那渡航婦女に関する件  (原文カナ)

     今田真人論文から

    1938年(昭和13年)5月31日

在芝罘(しふう)領事→外務大臣

機密第157号

 本件に関し5月14日付条機密合第423号

 貴信を以て調査方ご下命に趣敬承然る処

 当地に於ける邦人側特殊婦女数は

 現在尚不足の状況にあり 

 すなわち海軍陸戦隊約800名駐屯し

 かつ砲艦もまた常に碇泊し居るに対し

 現に稼業中の者は内地人13名

 鮮人4名計17名

 (復帰者は内地人4名鮮人4名計8名なりしも

 海軍側の慫態ありてその後増加したるものなり)にて

 右のほか軍医の厳重検黴を経たる

 支那妓女約60名に対し合格証を交付し

 兵士の出入りを許可し居る状況なり   

  以下省略