アメリカによる隠蔽とソ連
戦後ソ連は東京裁判で細菌戦部隊のことを
公けにすることを要求しました。
しかしアメリカは731部隊の
膨大な研究資料・情報を手に入れるため、
石井四郎をはじめ主要メンバ-と取引を開始し、
結局関係者は全員戦犯から外され、
私たち日本人からも戦後隠されてしまいました。
●D・マッカ-サ-
動物実験はあったかもしれないが、人体実験などなかった
●J・キ-ナン判事
日本は先の戦争で生物兵器を使用する計画がなかった
朝鮮戦争でアメリカが日本の旧部隊員と協力して
細菌戦を行ったことも、絵空事として否定しました。
アメリカの調査は1947年末頃終了しましたが、
ソ連はハバロフスクの裁判に備えて、
東京裁判のソ連検事局から、
石井四郎等関係者の身柄の引渡しを
要求してきました。
アメリカは身柄引渡しを拒否したため、
ソ連の調査団が石井の訊問に来日しました。
しかしアメリカ軍立会いの訊問で成果は得られませんでした。
このことは前項目で書きました。
ソ連からの情報提供の要求に対し
協議を続けていた三省調整委員会は
1947年3月21日に結論を出し、
マッカサ-に結論を連絡しました。
●三省調整委員会からマッカ-サ-への打電
(「731部隊の生物兵器とアメリカ」から要約)
パ-トⅠ
以下の条件の下に、連合国最高司令官は
石井中将、菊池、太田両大佐のソ連による
尋問を管理することを許可する。
a.菊池、太田両大佐はアメリカの専門家の
尋問を受けさせること。
陸軍省は尋問の実行とそれに続く
ソ連の尋問を傍聴するために、
特別に訓練された専門家をただちに
派遣する用意がある。
b.事前の尋問において
ソ連側に暴露するべきでないと
思われるほど重要な情報が出てきた場合。
菊池と太田はその情報をソ連側に
明らかにしないよう指示をうけるようにする。
c.ソ連の尋問に先立って、
日本の生物戦専門家たちはこの件について
アメリカの尋問を受けたことを言わないよう
指示を受けること。
パ-トⅡ
日本人による中国に対する戦争犯罪について
興味を持っているということは明確に示されていないので、
尋問はそうした角度からというよりは、
友好国の政府に対する友好的な態度の
表明といして許可されるものである。
今回の尋問許可は将来の前例になるものではなく、
その都度検討されるべきものであることを
ソ連側に明確に示すこと。
この連絡を受けGHQ参謀第2部(G2諜報部門)の
ウィロビ-部長はソ連の対日理事会代表
デレビヤンコ中将にソ連の尋問要求に対する
回答書を出しました。
●ウィロビ-部長からの回答
(731部隊の生物兵器とアメリカから要約)
ソ連側には中国人や満州人に対する
戦争犯罪について取り調べたいという
明確な興味が感じられない。
当該の人物についてはすでに
極東国際軍事裁判のソ連検察団の協力を得て、
国際検察局、連合軍最高司令部合同の尋問を考慮していた。
しかしながら、この合同尋問は
戦争犯罪調査の目的では認められないし、
また将来の前例となるものではない。
つまりアメリカはソ連からの要求を拒否したのです。
そして1947年8月アメリカ政府の
三省調整委員会極東小委員会はは次の決断を下しました。—
●SFE 188/2、State-War-Navy Co-Ordinating
Sub-Committee for the East
実際上、石井と彼の協力者によって
もたらされた日本の生物戦計画に関する情報を
情報チャンネルにとどめる。
という彼らとの約束は、米
政府が生物戦活動に戦争犯罪行為はあったが、
それにたずさわった者はだれも
追訴しないと約束するのに等しい。
このような了解は、石井と彼の協力者がこれまでに提供し、
これからも提供し続ける情報の存在ゆえに、
アメリカ国民の安全保障のために
きわめて重要な価値をもつだろう。
しかしながら以下に述べる事態が発生する
わずかな可能性についても留意しておく必要がある。
すなわち、奉天地区でソ連が独自に行った捜査によって、
アメリカ人捕虜が生物兵器機能の実験目的で使用され、
その結果死亡したことの証拠を暴露する可能性。
さらにその証拠が東京で審理中の重要日本人戦犯の反対尋問で
ソ連人検事によってもち出される可能性である。・・・・
アメリカにとって日本の生物戦デ-タは
国家安全保障上、高い重要性をもつものであり、
「戦争犯罪」として訴追することの重要性は
それに及ぶものではない。
「GHQが731関係者に現金を」
アメリカは731部隊関係を隠蔽し、
情報を独占するために関係者に
多額の現金を渡していた事がわかりました。
●2005年8月15日 東京新聞
ワシントン=共同 全文掲載します
第二次大戦中に中国で細菌による人体実験を行った
旧関東軍防疫給水部(731部隊)関係者に対し、
連合軍総司令部(GHQ)が終戦2年後の1947年、
実験デ-タをはじめとする情報提供の見返りに
現金を渡すなどの秘密資金工作を展開していたことが
14日、米公文書から明らかになった。
総額は国家公務員(大卒)の初任給ベ-スで比較すると、
現在の価値で2000万円以上に達する。
人体実験で3000人ともいわれる
犠牲者を出した同部隊をめぐっては、
GHQが終戦直後に戦犯訴追の
免責を約束したことが分かっているが、
米国が積極的に働き掛ける形で資金工作を
実施していた事実が判明したのは初めて。
文書は、米国が731部隊の重大な戦争犯罪を
認識していたにもかかわらず、
細菌兵器の開発を優先した実態を記している。
文書は47年7月17日付の
GHQ参謀第2部(G2諜報部門)=肩書は当時、以下同=の
ウィロビ-部長のメモ「細菌戦に関する報告」と、
同月22日付の同部長から
チェンバリン陸軍省情報部長あて書簡(ともに極秘)。
神奈川大の常石敬一教授(生物・化学兵器)が
米国国立公文書館で発見した。
同文書によるとウィロビ-部長は、
731部隊の人体実験を調べた米陸軍省の細菌兵器専門家、
フェル博士による部隊関係者への尋問で
「この上ない貴重なデ-タ」が得られたと指摘。
「獲得した情報は、将来の米国の細菌兵器計画にとって
最大限の価値を持つだろう」と、
G2主導の調査結果を誇示している。
具体的な名前は挙げていないものの
「第一級の病理学者ら」が資金工作の対象だったと記載。
一連の情報は金銭報酬をはじめ食事や
エンタ-テイメントなどの報酬で得たと明記している。
陸軍情報部の秘密資金から
総額15万円から20万円が支払われたとし
「安いものだ」「20年後の実験、研究成果が得られた」と
工作を評価している。
当時の20万円を国家公務員(大卒)の初任給で
現在の価値に置き換えると
2000万円-4000万円に相当する。